死人に口なし 「ほのか、止まりなさい!」 茅野の声が響いた 私は茅野の姿を一瞥すると、大きく下がった それにあわせて距離を詰めてきた七松先輩 大振りな攻撃をかわして、鳩尾に拳を叩き込む 衝撃に少し体制を崩したところで、足を払い、完璧に体制を崩す 「七松先輩、一時休戦です」 「やだ」 後ろに回ってから、先輩の首元にクナイを突きつけてそういえば、先輩はすねたように否と答える その声音に、既に怒気はない どうやら途中からは戦闘を楽しんでいたらしい 止められて少々残念そうだ 「アンタ、よく一瞬で気がついたわね。鈴音さんがスパイだって」 「元々変だなって思ったから」 どこが変っていうのは分からなかったけれどとこぼせば、野性的ね相変わらず、と返された 七松先輩がきょとーんとした顔をする どうやら分かっていないらしい そんな様子に、不破くんが苦笑をこぼした 「たまに、鈴音さんが鈴音さんじゃないときがあった」 「あー、それ分かるぞ。私もたまにあれっておもったけど気にしてなかったから」 「七松先輩、気がついてたんですか?」 私がなんとなくの違和感を言えば、七松先輩が分かったとばかりに声を上げた そして先輩は鈴音さんの隣に転がった死体を見る うんうんと頷く様子に、何か分かったのかと視線を向けていれば、わたしわかんない!と悪びれもなくそういった それに思いっきりこける茅野と不破くん 体制をいち早くなおした不破くんが、声を上げる 「じゃあ何で頷いたんですか・・・」 「なんかその方が分かったように見えるから!わたしは頭を使うのはできないからな、いつも長次とか仙ちゃんの仕事だし」 その台詞に、不破くんは思いあたるところがあったのか、あー・・・確かにそうかも、とこぼした くのたまでは私と茅野しか居ないから、茅野が頭脳で私が力と分担されているけれど、完璧にと言うわけでもない 一応、オールマイティに出来るようにとシナ先生から教育を受けているのだ 「で、この忍者ってどこのー?」 「シャグマアミガサタケ城。最近やけに力を伸ばしてきた城ですよ」 「ふーん」 茅野に聞いた七松先輩は、答えを返されてもピンと来ていないような返事 それに、茅野は小さくため息をついた 「とりあえず、ほのかの世話役はこれで解任ね?」 「報告書提出して終わりのはずかな」 後でまとめないと、とこぼせば、報告書?と横から疑問の声 私はその声にこくりと頷く 「鈴音さんの世話ももちろん入ってるけど、一番の目的は彼女が本当に害のない人間か否か監視することだったから」 「あ、だから一縷っていつも鈴音さんの周りに居たのかー」 「そうやって気がつかないっていうのが問題だったんですよ」 茅野が七松先輩の台詞に呆れたようにそう答えた あまりにも忍たまが警戒心なく鈴音さんを受け入れた事が私たちくのたまは不思議で仕方なかった だからこそずっとついていたのだし 「・・・まあ、確かに今考えてみると鈴音さんの事なんであんなに信じてたのか、分からないかな・・・」 ぽつりと呟かれた不破くんの言葉 鈴音さんが忍たまにすんなりと受け入れられた理由は、死人に口なし、となった 死人に口なし → 戻 |