冬知らず「不安」 side:篤葉 青瀬さんは堅苦しいから朝花で良いと言われてから、私と朝花ちゃんはとても仲良くなった けれど、私が朝花ちゃんと話すのは決まって朝花ちゃんに宛がわれた部屋で、食事も部屋で取っているらしい 元気なのにもったいないと思うのは、きっと私が病弱でなかなか外に出れなかったから もちろん朝花ちゃんの事情は理解しているから、無理に外に出ろなんて言えない 「どうかしたのか?篤葉」 「小平太・・・」 廊下の一角で日向ぼっこをしながら、小さくため息をつけば、ひょいと覗き込んできた小平太 元気がないな、と言いながら、とすんと小さく音を立てて私の隣に座る様子を見ながら、私は小さく苦笑をもらしながら、朝花ちゃんの事で、少し、とこぼした 小平太はあー、あの子かーと言いながら、ごろんと寝転がった 「境遇的に、私たち生徒は皆、疑って然るべきだと思うわ。それをさせないために、朝花ちゃんが外に出ないようにしてるのも、もちろん正しいことだと思う。でも・・・」「外に出れないのが、辛いってことかー。私もずっと部屋の中に居るのは嫌だな」 「小平太はじっとしていられないでしょう?長次が良くこぼしてるの聞くよ」 くすくすと笑いながらそういえば、小平太はバツの悪い顔をした 私は笑いながらも、それが小平太だもの、仕方ないよといえば、小平太は笑って同意した 「私は動くのだけがとりえだからな」 「そんなことないよ。私は小平太の楽しそうな顔を見てるだけで元気がもらえるもの」「楽しそうだな」 廊下の角から顔をのぞかせたのは仙蔵 手には書簡を持っていることから、次の任務のことだろうかと見当をつける 前回の任務がちょうど2週間前だったから、いつも通りというところ 「今すぐとは言わんが、あとで部屋に来てくれないか?資料は私が用意しておく」 「ありがとう、仙蔵」 「いや、小平太も過保護はほどほどにな」 仙蔵は私にそう伝えて去って行った 今でも変わらない、作戦担当の役割 けれど変わったのは、私も一緒について行くようになったこと もちろん小平太はあまり良い顔をしないけれど・・・ 決まった時は、仙蔵は作戦の修正がやりやすくなったと、少し喜んでいたのを覚えている 「・・・任務の間は、朝花ちゃん、一人になってしまうけれど・・・」 「長次も篤葉もいないのは初めてだな、でも、大丈夫じゃないか?」 いい子だし、危険だってわかってるからうかつなことしてないし、何より篤葉が信じてるんだろう? そう笑う小平太に、私は少しだけくすぶった思いを気のせいだと思うように、うなずいた 冬知らず「不安」 → 戻 |