見せばや「安心」 宵闇がざわりとうごめく気がした こうなったのは自業自得だと気がついていたけれど、それでも助けを待つ私は何て愚か者なんだろう 私の存在自体が長次くんをはじめとした忍術学園の人たちに迷惑をかけているというのに 少しでも自分の気配が薄くなるようにと木の陰で小さく縮こまる 早く朝が来ればいい そう願っていたとき、がさりと草を踏む音がした 「なんだぁ?こんなところに人が居るぜ」 「おっ?コイツ女じゃねぇか!」 不穏な声に小さく身体が震える 女だと、その声に歓喜が混じっていた いくら現代で過ごしていた私でも、この時代にこんな場所で女が一人で居れば、"そういう"意味で危ないということは理解している 背は木に預けている、後ろに下がることなど出来ないし、例えできたとしても、ぬるま湯の世界に浸かっていた私が彼らから逃げることは到底出来ない ああ、けれどこれも私の自業自得だ 私が考え無しに学園を飛び出さなければ、起きなかったことなのだから 諦め、体から力を抜きかけたそのとき、かさり、と小さく草の揺れる音がした そしてひゅ、と何かが風を切る音 その音に、目の前に迫っていた男たちの肩が揺れる 「な、なんだっ?」 かつん、と音を立てて男たちの背後にあった木にそれは刺さった 黒い、僅かに差し込む月明かりで鈍く光るそれを、私は知っていた ふわり、と誰かに抱き上げられ、そのまま私を襲うのは浮遊感 はっと目線をあげれば、黒い頭巾に包まれた顔 目元しか見えないけれど、その雰囲気は何よりも安心する人のものだった 「ちょうじ、くん・・・っ」 「・・・無事でよかった、朝花」 もう、大丈夫 そう思った瞬間、緊張で張り詰めていた気持ちがふっと緩み、じわり、と目に涙がこみ上げてくる 少しでも長次くんが遅く来たら、既に諦めかけていた私はきっと死にたいぐらいに後悔する行為を受け・・・汚れた自分に耐えられなかっただろう 私は、弱いから 目じりにたまった涙が、ぽろりと落ちた 長次くんは、私の涙を指で掬うと、太い枝に私を下ろして、少し待っていろ、と残してと下に下りていった その後ろ姿を見送り、私は心の内でつぶやいた 戻ってくるまでに、この涙を止めてしまわなければ 自業自得の私が泣くことは・・・お門違いだから 見せばや「安心」 → 戻 |