蕗の薹「処罰は行わねばならない」 side:篤葉 「私には、朝花の方が大切だ」 はっきりと、長次は夏穂ちゃんにそういった いつもは小さな声でしか話さない長次なのに そのいつもとの違いに、私はなんだか嬉しくなる だって、長次にとっての特別が出来たって言うことだから 私にとっての特別が小平太であるように、長次にとっての、特別が 「長次」 「・・・頼んだ」 長次は夏穂ちゃんに背を向けると、学園を出て行った 私は夏穂ちゃんに笑みを向ける つよくかみ締められた夏穂ちゃんの唇からは、血がにじんでいた 目は嫉妬の炎を映していて、三禁の恐ろしさを感じる 恋に溺れることなかれ 恋をすることが駄目な訳じゃない、それにのめりこんで、自分を見失う事がダメなのに 「夏穂ちゃん、貴方は自分がしたことの意味を、分かってる?」 「なにがいけないんですか、先輩。学園の敵を追い出しただけですよ、私は。私は正しい、違います?」 「朝花ちゃんは学園の敵なんかじゃない、ただの女の子だよ。それを勝手に敵に仕立て上げたのは夏穂ちゃん、貴方」 「っ追い出して、なにが悪いって言うんですか!一般人に知られちゃいけないこの学園にかくまって、保護して!のうのうと生きてる事しか出来ないただの女なのに!」 声を荒げて、感情を乱して そんな姿を見て、余計に心が離れていくのを感じた ・・・私の知る夏穂ちゃんは、こんな子じゃなかったのに でもきっとそれは、私が見ていなかっただけでもっと前から芽は出ていたんだろう 朝花ちゃんは、ただのきっかけでしかない 「朝花は長次にとって何よりも大切な人だぞ?朝花本人だって自分がどんな影響を及ぼすか分からないからって、ずっと隠れるように生活してたし。凄く謙虚でいい子だと私は思うけどな」 「七松先輩まで・・・っ!あんなどこの誰とも分からない阿婆擦れに洗脳されてるっていうんですか?!いいですよ、私があんなのの洗脳解いてあげます!」 「篤葉、何でコイツ話通じないの、私やだ!」 「般若みたいで凄いこわい、ね!」 叫ぶなり忍具を飛ばした夏穂ちゃんに、小平太は文句を零しながら忍具を避ける 私はそれ答えて、手裏剣をクナイではじいた 甲高い金属の音が響いて、それを聞いた人が何事かと集まってくる 「夏穂・・・?」 「なんで、夏穂ちゃんが・・・」 「あの女が悪いのよ!!私から中在家先輩を奪うから!!」 叫んだ夏穂ちゃんを、小平太が鳩尾めがけて思い切り殴る 咳き込んだ夏穂ちゃんは、気絶して崩れ落ちた 厚木先生が現れ、気絶した夏穂ちゃんを担ぐ 「お前達は戻りなさい。七松、朝日奈は一緒に」 指示に従って解散した後、小平太とともについていった先は学園長の庵で 入った先には、先生方が勢ぞろいしていた 寝かされた夏穂ちゃんを一瞥した学園長は、私と小平太にまっすぐ視線を合わせてくる 「・・・して、何が起こったのか説明してもらっても良いかの?」 「はい・・・そこに居ます夏穂は、中在家長次への恋心を持っていました。ですが、先にこの学園に保護されました青瀬朝花へ嫉妬し、青瀬朝花へ何かしら働きかけをしたようです。青瀬朝花の部屋に、本人は居ませんでした」 「帰ってきた私たち接触した夏穂と長次が話しをして、長次は現在青瀬朝花を探しています。その後は、先ほどの通りです」 「ふむ・・・二人から見て、どうじゃ」 説明をした後、学園長は私と小平太に静かに問いかけた それが何の問であるのか、それを私たちは既に知っている 私も小平太も、学園長の問に、静かに首を横に振った 「そうか・・・くのたま五年、夏穂を、今この時を以て廃籍とする」 「地下でよろしいですか、学園長」 「うむ、ひとまずはそこで良いじゃろう」 その後、夏穂ちゃんが学園に戻ってくるとは無かった → 戻 |