もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

彼岸花「恐怖」






“貴方は、この学園にとって邪魔でしかありませんから”
その言葉は、思いのほか私にとても深い傷を負わせた
嫌悪するように向ける視線、人を貶めるために交わされる噂話、近づけば蔑まれ、孤立していく
所詮、人間なんて変わらないものなの?


「・・・こ、わい・・・」


ぎゅっと自分をつよく抱きしめた
抑えるように力を込めても、かたかたと震える身体
ダメなのに
私は、迷惑をかけたらいけないのに
私という存在全てが邪魔でしかない、事実
頭から、あのくのたまが言った言葉が離れない
私の味方は、学園(ここ)に居ない

私は今、独り?

そう思った瞬間、頭が真っ白になった





気づけば見知らぬ森に居た
いつ私は学園を出てしまったのだろう
それすら覚えていない
暗い森で、帰り方も分からない異物の私
帰り方だけじゃない、私には帰るべき場所すら持っていない
私には何も無い、それだけは確かだった

唐突に鳥が飛び立って、森が揺れた
肩を大きく跳ねさせて、慌てて後ろを振り返る
ここは、現代じゃない、野生の動物だっているに決まってる
私には身を守る術は無いのに


「ちょうじ、く・・・いや、焦りはなんだというのだろうか
既に忍務は終わり、帰るだけなのだから、忍務が失敗するかもしれないという不安や焦りはないというのに
この胸騒ぎはきっと気のせいだと、そう信じて、はやる気持ちを抑えた
ただ今は、学園へ帰ることだけを考えて



彼岸花「恐怖」






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