プール きらきらと太陽の光りが反射する水面に、沢山の人 そして私は今にも走り出したくてうずうずしている小平太の腕をがっしり掴んでいた プールサイドは走っちゃダメ、ゼッタイ。怪我は良くありません、ということだ 「広いから迷子にならないようにね。私は泳がないから、そこの日陰になってるところで荷物見てるよ、疲れたら戻ってくるといい」 「え、伊織さんはいかないのか?」 「せっかくきたのに?もったいないな」 そこの、と言ったときに小平太を掴んでいない手で空いている日陰を指差した 私の言葉を聞いて、小平太と留三郎がきょとりとする きゅ、とひっぱられたパーカーの先を見ると、伊作が遠慮がちに掴んで私を見上げていた 心なしか目が潤んでいるような気がする・・・気のせい? 「ぼく、伊織ねえさんとおよぎたい・・・」 伊作の言葉に、私はあー・・・と唸ってから、ぽんぽん、と伊作の頭を撫でた 荷物番をしていないといけないのは本当のことだし、迷ったときに戻ってこれる場所がある方が心強いというのは、自分が幼い頃に経験済みだ ・・・まあ、6人にとってはあんまり必要ないのかもしれないけれど、なれない現代だし、きっと必要・・・だと思いたい 私は伊作の目線に合わせるようにしゃがむと、目元を拭った 「最初は6人で遊んでおいで。私は・・・お昼ご飯の後になったら一緒に行動するよ」 「・・・ほんと?」 「ホントだよ、約束」 更衣室のロッカーの鍵につけられた、ICチップが埋め込まれたリストバンドのおかげで、貴重品は持ち歩かなくて済むけれど、ご飯を持ってきているから全面的に放置ってわけにも行かない だからご飯の後ならば、といったところだ 伊作はずっと遊べないわけじゃないからと納得して、その上で指切りをすると他の5人に混ざった 後ろ姿に、走っちゃダメだよーと声をかけて、私は日陰になったその場所に座った ミンミンと蝉がうるさく鳴く中で、強い太陽の光りで反射して光る水面が、まだまだ夏が終わらないことを主張しているようだ 「・・・こんなに静かだったっけ」 ぽつりと呟く 確かにきゃいきゃいと沢山の人がはしゃいでいるのに、どこか遠い 6人がいつも回りに居る生活に慣れてしまったからだろうか、なんだか物足りない 皆がくるまでは、一人だったというのに いつか帰ってしまう日が来る、それなのにその時の想像が全然浮かばない ふー、とため息をついて、やめたやめた、と呟いて考えをかき消すように頭を振った ふと視線を上げれば、すぐ近くのプールで泳いでいた伊作が、楽しそうにこちらに手を振っている それに自然に笑みを浮かべて、私は手を振り返した プール 戻 |