もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

冬の感じ方 ver.雷蔵






朝起きて五人組の寝ている部屋を覗くと、夏の時期は暑いのかいつも蹴って足元にまるまっていた掛け布団をきっちりかけた雷蔵が見えた
優柔不断であるのにもかかわらず、意外と大雑把な雷蔵は、そんなところで?と思ってしまうようなところでとっても大胆になる
夏の時期に三郎に聞いたところ、向こうでも夏はずーっと布団をかけても蹴ってしまっていたらしい
トイレに起きたときに直したりはしたらしいけれど、朝になると変わらず蹴られた布団があったのだとか
・・・まあ、冬になって布団を蹴っちゃうよりはマシかな、風邪引いちゃうし
都会の夏は、山と違って夜でも暑いから、布団を蹴っちゃうのだって仕方ない部分もある


「・・・にしても・・・寒かったのかな、雷蔵」


布団をきっちり被って、その上で猫のように丸まっているのが良く分かる
そろそろもう一枚布団を出してあげないといけないのかもしれない
そうと決まれば、朝食の後にでも、押入れにしまった布団を天日干ししないと

私は静かに扉を閉めると、キッチンに向かった




「おはよう、伊織さん・・・」
「あ、おはよう雷蔵・・・って、上着とかないの?」


しばらくすると、掛けていた布団を肩にかけたままの雷蔵が起きてきた
その姿に、私はぱちぱちと目を瞬かせながら聞く
返ってきた言葉は、どこにおいたかわすれちゃって・・・という言葉
私は昨晩の記憶を思い返す
確かお風呂から上がったあとに、湯冷めするからと上着を着せて、でも暑がりのきらいがある雷蔵はすぐに脱いでしまったんだったか

そこまで思い出してから、私はソファに視線を向ける
その背もたれには、昨日風呂上りに渡した上着がかけてあった


「雷蔵、そこに上着があるから、それ着て布団は戻しておいで。ついでに皆も起こしてくれると嬉しいな」
「うん、わかった。ちょっとまっててね、すぐにおこしてくる!」


雷蔵はソファの背もたれにあった上着を着ると、ぐしゃっと丸めた掛け布団を持って部屋に走っていった
雷蔵が入っていった部屋の中から、なんだか痛そうな音が響いた
・・・転んだのだろうか、大丈夫かな・・・被害者は扉の近くに寝ていた八左ヱ門な気がするけれど
コーンスープをかき混ぜる手を一度止めた私は、棚から救急箱を取り出すと、それをもって五人の部屋に向かった




(後日、改めて雷蔵に聞いてみた)

「雷蔵、雷蔵の冬が来たなーって思うのって・・・」
「ぼく?ぼくはねー、さむいなーっておもいはじめるときかな?いつのまにかふとんをけらなくなってるんだよ」
「・・・あ、やっぱり」

ある意味予想通りでした


冬の感じ方 ver.雷蔵