冬の感じ方 ver.三郎 雪が降りそうなほど寒い夜 それでも買い出しには行かないといけなくて、今回は三郎を連れてスーパーへ行くことにした 本人は雷蔵と離れるからか、ちょっと嫌そうだったが、そこは無理を言ったのだ だって、兵助と勘右衛門とハチを残すのはなんだか不安じゃないか、と 最初から来て、すでに現代の生活にも慣れた三郎と雷蔵を連れて行ったら、誰が残るか 途中からではあるが、それなりには慣れたがまだ不安の残る兵助 兵助の次に来て、ハチよりは現代にくるのは早かったものの、まだ日の浅い勘右衛門 一番最後に来て、まだアレはなんだコレはなんだと見るものすべてに興味を持つハチ 各々の顔を思い出したのか、三郎は沈黙した 「で、せっかくだから三郎が食べたいものにしようと思うんだけど、なにが良い?」 「そうだな・・・さむいからなべがいい・・・あ、とうふはおおくなくていいからな!」 へーすけをよろこばせるのはいやだ!と言う三郎 まぁ、兵助を連れて行くと必ず豆腐になるからそれが関係してるんだろう ・・・一応、私も飽きないように工夫はしているんだけど・・・ そんな事を言いながら歩いていると、ふっと白いものが視界の端に見えた 「お、ゆきだ」 「ホントだね、道理で寒いわけだよ」 つもるか?とちょっと弾んだ声で聞いてきた三郎に、どうだろうね、と良いながら、私はあることに気がついた 「三郎、マフラーは?」 「あ、そういえばあんまりさむいってかんじなかったから、つけるのわすれてたな」 その言葉にきょとんとしたのは私だ雪が降るほど寒いというのに、寒くないとは・・・ 子供体温?なんて思って手袋を外して、頬に手を当てると、じんわり暖かい まるでなにか一枚ある上から感じるように・・・ と、そこではたと気づく 「伊織、わたしの顔はつくりものだってわすれてないか?」 にやりと笑ってそういった三郎 言われた通りだ いつも雷蔵と一緒にいて仲が良いし、赤の他人って言うよりも双子のように見えるから、三郎の顔が作り物だって忘れがちになる 「じゃ、寒いって感じにくいのはその顔のおかげ?」 「ああ、かみもらいぞーのはもさもさしてるから、けっこうあったかいんだ」 「夏は暑いけど?」 「なつはうすいやつにかえるぞ!」 ずいぶんと用意の良いことだ そういうと、よねんかんずっとだからな、と少し嬉しそうに言った よほど雷蔵と仲がいいのが嬉しいらしい まぁ、きっとなんだかんだ二人の波長があったんだろう 「じゃ、三郎が冬だなって感じるのは、顔が寒くなるときかぁ」 「そういえばへーすけにもきいてたな」 そのえんちょーってやつか、と三郎が聞いてきたので、私はうなずいて返す それにしても、兵助はまだわかるけど、三郎も独特の季節の感じ方を持ってるものだ そう思いながら、私は少し急ごうかと言って、三郎の手を取ると、雪のちらつく中を歩いた 冬の感じ方 ver.三郎 戻 |