もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

冬の感じ方 ver.兵助






ある日の夕食
今日は寒いし、湯豆腐にでもするかなーとスーパーの安売りをしている豆腐を見ながらそう思い、豆腐をいつもより大目に買った日だった
帰ってきた私の袋の中身を見て、兵助が目を輝かせたのは、まあ、彼の性格から当たり前のことだろう
そして夕食として出た湯豆腐に、兵助が目をさらに輝かせたのは、まあ予想の付くことだ
それに反して、他はちょっといやーな顔をしたけれど
・・・だって豆腐は安いんだよ、兵助が欲しがるお高いやつはまた別だけれど

その夕食を食べ終わって、兵助は一言しみじみと呟いた


「ふゆだなー」
「・・・や、冬だけどね・・・。いきなりどうしたの?」


豆腐が沢山食べられて満足なのか、とても笑顔な兵助は、私の質問ににこりと機嫌がよさそうに笑った
しかしその理由は・・・まあ、豆腐好きらしいというか・・・


「だって、ゆどうふはふゆのたべものだからな」
「・・・・・・」


暖かい+豆腐=湯豆腐イコール、冬に食べる
きっと彼の頭の中ではそういう計算式なんだろう
まあ、兵助らしいといえばそれまでなのだけれど
・・・この子、豆腐で季節が決まるの?
私たちの会話に、勘右衛門が苦笑したのが見えた


「へーすけはふゆになるといつもゆどうふたべてふゆだなーっていうよね」
「なんだよ、かんちゃんだってそうだろ」
「おれがたべるんじゃなくて、へーすけがたべてるのみて、あぁっておもうんだよ」


とりあえず二人の会話から、兵助が湯豆腐を食べるたびに冬だと思うのはいつものことらしいと分かった
そこまで豆腐が好きかとも思うけれど、まあ、兵助だし・・・


「ちなみに聞いてみるけど、冬が湯豆腐なら、他の季節は?」
「はるはひややっこにねりうめをのせて、なつはねぎとしょうがで、あきはにものとかにするのがいいな」
「全部豆腐なわけね・・・」


もちろんなのだ!ときらきらと目を輝かせる兵助
・・・この分だと湯葉とかもすきそうだなぁと思いつつ、友人が湯葉食べに行こうよ湯葉といっていたのを思いだした
・・・連れて行ってもいいけど、あの子うるさくなりそうだな・・・やるなら家に招くか
他の子はみんないやな顔するかもしれないけれど
探せば湯葉の普通じゃない食べ方とか有りそうだし


「そのうち、家で湯葉でもやってみようか?」
「ほんとう!?」
「うん、友達が前に湯葉食べたいって言ってたから、その子も家に呼ぶけど」


一度会ってたっけ?と聞けば、ふるふると首を振られる
お風呂から出た三郎が私と兵助の話を聞いていたのか、ともえさんがきたのはわたしとらいぞうしかいないときだぞ、といってくれた
そうか、言われてみるとそうかもしれない
今回みんな揃ってるから、またうるさくなりそうだなと思いながらも、まあ、喜ぶならいいか、と友人に話をつけるため携帯を開いたのだった



冬の感じ方 ver.兵助





「ともえ」は友人Aの名前です
友達A(ともだちえー)から、ともえになりました