もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

百人一首







またもやごそごそと新年から物置をあさっていた仙蔵が、何か持ってきたらしい
・・・それにしても仙蔵、物置好きだなぁ・・・
手渡されたものは小倉百人一首
あぁ、そういえば、昔祖母がくれた記憶がある
何度か遊んだ記憶も
確かカルタのようなものだったか・・・


「百人一首、やりたいの?」
「そとではあまりあそべないしな、ならばしつないのあそびをなにかとおもったのだ」


百人一首ならばみんな出来るだろうと考えたらしい
仙蔵らしいといえば仙蔵らしいけれど
でも室町時代ならばみんな遊んだことぐらいある・・・のかな


「じゃ、みんなでやってみようか。私が読み手でいいの?」
「あぁ、たのんでもいいか?」
「分かった」


そう言えば、仙蔵は呼んでくると書斎にこもっている長次を呼びに言った
私はリビングのテーブルを片付けて、場所を作り、札を並べる
ぱたぱたと足音を立てて、私に激突してきたのは小平太だ


「うわ、小平太、いきなりはダメ、危ないでしょ」
「伊織ならだいじょうぶだってしんじてるからだいじょうぶだ!」
「・・・それわけわかんない・・・」


とりあえず退きなさいといえば、素直に退いてこちらをのぞきこんでくる
百人一首かーとこぼす小平太に、やっぱり知ってるのねーと返した
この時代ではもう百人一首よりは、いろはカルタのほうが主流なのだから
小平太に釣られたのか私が何か用意しているのが気になっていたのか、伊作と留三郎も寄ってきた


「伊織ねえさん、これやるの?」
「仙蔵が見つけてきてね。みんなでやろうってさ」
「ひゃくにんいっしゅなんてさいきんぜんぜんやってないな」


懐かしそうに目を細めた留三郎に、そっか、じゃあ久々なんだね、と笑えばこくりと返される
きっと勉学に忙しくて、休みだって実技とかそういうものが大変だったに違いない
それに、学園では最上級生だったというし、それではきっと、こういう遊びをすることも少なくなっていただろうし


「伊織、ちょうじをつれてきたぞ、あとついでにもんじろうもな」
「ひゃくにんいっしゅをするんだってな」


あっという間にリビングに集まった全員に、並べたカードの周りの、好きな場所に座るように言えば、素直に全員がついて必死にカードの位置を覚えようとするので、くすりと私は小さく笑った


「さて、それじゃ、始めようか?」


私は切った句だけの札を持つと、一番上から読み始める


「よをこめて とりのそらねは はかるとも・・・」
「あったっ、よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさし、だね」
「うん、正解、それじゃ、どんどん行こうか」


伊作が嬉しそうに下の句もあわせて読み上げたので、笑ってあっているといえば、喜びつつも、真剣に次の句を逃すまいと並べられたカードを見ながら聞く体制に入ったのを見て、私は笑みを浮かべると、次の句を読み始めた





百人一首






ちなみに勝ったのは仙蔵で、次は長次でした