もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

耳なお仕置き








「まて、もんじろう!」
「いやだぁぁっ」


ばたばたと部屋を走り回る文次郎と仙蔵
その様子を、伊作がはらはらと見守っている
留三郎は、伊作の横でざまあみろと笑っている
仙蔵、文次郎のあとはきっと留三郎にターゲットすると思うから笑ってられるのはきっと今の内だと思うんだ
長次はソファーに埋もれて、読書中で我関せずだ
まぁ、耳を発掘したときにいたから、真っ先に仙蔵の餌食になっていたというのもあるだろうけれど


「いいかげんにあきらめろ!」
「さっきからいやだっていってるだろっ、せんぞうこそあきらめろっ」


先ほどからぐるぐると部屋の中を走り回る2人に、いい加減に止めた方がよいかと思い始めた
だって長次がなんだか迷惑そうなオーラを出しているし
伊作も私の袖先ほどからつかんでるのよね

私は一つため息をつき、立ち上がると、走り回っていた2人の襟を掴んだ


「はい、ストップ。止まりなさい」
「伊織、とめるな!」


ぺしん、と軽く仙蔵の頭をはたくと、私は猫耳をとりあげた
あっと声を上げる仙蔵だったが、私は気にせずに仙蔵には取れないよう高く上げる


「走り回るのは伊作がそのうち巻き込まれそうだから、駄目」「なら、走らなければいいのか?」
「そういうことじゃねぇっ!」


私の言葉に、仙蔵は聞き返してきた
文次郎が騒いでいるが、オールスルーだ、さすが仙蔵
私は仙蔵の言葉に少し考えると、文次郎の首根っこをつかんだ
ぐえっとカエルがつぶれたような声が聞こえたが、私は聞こえないふりをして、仙蔵に猫耳を渡す
文次郎が暴れたが、そこは体格の差でどうにかした


「さすが伊織っ、わかっているな!」
「はなせぇぇっ!」


にやにやと笑って近づく仙蔵に、文次郎はばたばたと暴れる


「仙蔵、私一般人だから、あんまり押さえてられないわよ」
「そうだな」


仙蔵はさっと文次郎に猫耳をつけると、数歩下がった
留三郎が噴き出す音が聞こえる


「うむ、かんっぺきだ!」


一言
仙蔵は腕を組んで頷くと、満足げにそう言った
文次郎はげっそりとしている
私は押さえていた文次郎から猫耳を外すと、手に持って留三郎に近づく
留三郎はじり、と一歩下がった


「・・・伊織さ、ん・・・そ、それは・・・」
「毎回物を壊すお仕置きもかねてるんだよ、留三郎」


私はにこりと笑うと、踵を返して逃げようとした留三郎を捕まえ、素早く耳をつけた
今度は文次郎がぶっと笑った


「まぁ、これで懲りたら物を壊さないようにするんだな」


私はふふっと笑うと、機嫌良く猫耳を片付けにいった






耳なお仕置き