もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

耳!







がさごそと物置をあさる音
・・・前にもこんなこと無かったっけ?
私がそう思いながら物置のある場所を覗き込めば、そこには仙蔵の姿
ついでに長次も一緒である


「・・・なにしてるの?」
「ん?おぉ、伊織か。いや、まえにほうろくひやをもらったからな、ほかにもなにかあるのではないかとおもってちょうじとあさってたのだ」
「・・・とめられなかった・・・」


少しだけ胸を張ったように言う仙蔵とは正反対に、長次はちょっとだけ後ろめたそうだ
・・・うん、尽力してくれたんだろうが、何様誰様女王様な仙蔵だから仕方ないよ・・・
私は長次の頭をぽんぽんと撫でた


「で、なにか見つかった?」
「うむ、すこしきになるものがな」


そういって引っ張り出してきたのは箱
ぱかり、と仙蔵があければ、そこから出てきたのは


「・・・カチューシャ・・・」


ぽつん、と呟く
・・・いや、普通のカチューシャならいいんだ、私も
けれどそれは・・・昔に強引に渡された猫耳カチューシャだったのだ


「ずいぶんとよくできているが、これはふつうにあたまにつけるものでいいのか?」
「・・・あぁ、うん、そうだよ。つけてみる?」


確か尻尾もあったけど、といえば、きらりと目を輝かせる仙蔵
・・・あぁ、嫌な予感


「わたしもつけるが、もんじろうのやつにつけさせてもいいか!」
「・・・勝手にすると良いよ・・・」


私には止められなかった
だって仙蔵凄く、笑顔が輝いてるんだ・・・
いつも物を壊す代償だとおもってがんばれよ、文次郎・・・
私はこの後で被害にあうだろう文次郎に心の中で合掌をして尻尾を引っ張り出してやった
箱を開けると出てきたのは黒い尻尾
猫耳とおそろいだ、我が友人ながら凝ってるな、まったく・・・
箱から出てきた尻尾を触って、長次はその手触りが気に入ったのか無言で何度も撫でている
仙蔵も、これぐらいならまだ可愛いですむんだけれどな・・・
生暖かい目で嬉々として耳をつける仙蔵を見ながら私はそう思った





耳!