もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

喧嘩の後に






ひくり、と私はこめかみをひきつらせた
私の前には、正座をして体を縮こまらせる2人の子供


「・・・喧嘩するなって言う訳じゃないけどね」


私はピシッと土の散らばった床を指さした


「ああやって、物を倒したり壊したりはするなって、言ったわよね・・・?」
「・・・いってた」
「あぁ・・・」


私は指さしていた手を戻して、腕を胸の前で組んだ
今の私はきっと背後に黒いなにかが見えるんじゃないだろうか
私は2人を見下ろして言った


「前にも言ったわ、郷にいれば郷に従えって。ここの主は誰だか・・・分かってるでしょう」
「伊織さんです・・・」


しゅん、と下を向いたまま呟くように留三郎が言った
文次郎もぐっと手を握ったまま下を向いている
私はそんな2人を見ながらため息をついた


「あのね、なんで私が怒るか分かる?」
「・・・ものをこわすからだろ」
「おれ、ちゃんとなおします・・・」


私はぺしん、と軽く2人の頭を叩いた


「違うわ。今回は植木鉢だから良かった。でもね、もしガラスが割れたら?危ないのはあなた達なのよ」
「!」
「あ・・・」


2人が私の言葉に顔を上げた
私は正座した2人に視線を合わせる


「この世界はあなた達にとっては未知の世界よ、触ったら危ないものだってあるし、扱い方を間違えれば大怪我だってするわ。私にとってあなた達は預かりものなの。だから帰るときに怪我残したまま帰るなんてして欲しくないのよ」


わかった?と聞けば、2人はこくんと頷いた
私はよし、いい子、と笑って頭をなでると、立ち上がった


「おやつにしましょ、ほら、そっちにいる仙蔵と伊作もおいで」


みたらし団子作ってたのよ、と言って呼べば、とたとたと近づいてくる彼らに、座ってなさい、と言って私はキッチンに入った





喧嘩の後に