もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

紫色のキミ!







「ただいまー!いさくーっ!」
「ただいまー・・・こらっ、靴脱ぎなさい、留三郎くん!」


玄関で留三郎くん相手にちょっと格闘していると、リビングからタタタッという軽い足音が2つ聞こえてきた・・・って2つ?


「おかえり、伊織ねえさん!」
「こら、手をつよくひくな、いさくっ」


伊作くんが手を引いてつれてきた主はさらさらのストレートヘアを結い上げた子だった
伊作くんはとても笑顔で、私は嫌な予感がした
履いていた靴を脱ぎ捨てて、買い物袋を床に置いたとき、伊作くんが自分の足につまづくのが見えた


「わぁっ」
「わ、わたしをまきこむな・・・っ」



ぽすっ



軽い音と共に、私の身体に軽い衝撃
どうやら間に合ったらしい


「・・・まったく、いつも走るなって、言ってるよね?」
「ごめんなさい・・・」


しゅん、と落ち込む伊作くん
自分が不運だという自覚があるのなら、もうすこし落ち着いた方がいいと何度も言っているだけに、自分が悪いことをしたという自覚はあるようだ
伊作くんに巻き込まれて私に受け止められた紫の髪の子は、だからあほのはぐみというんだ!とぷんすか怒っている
目は私を警戒している色がありありと分かり、野良猫が人間を警戒しているみたいだ
それこそ擬音であらわすとしたら、「きしゃー!」だろうか?


・・・しかしこの子、誰・・・?



ぼーっと二人のやり取りを見ながら、私ははやくおわんないかなーと思うのだった




紫色のキミ!






修正 2010.11.21