もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

伏木蔵のにゃー



吾輩の主人は暗い
そして、つわものだ


「あ、こなもんさぁん」
「あのね、こなもんじゃなくて昆奈門だからね」
「きゃぁ、スリルー」


医務室で曲者にだっこされて喜ぶ主人
いいのか、それで
委員長すらあんまりいじめないでくださいねーと言いながら放置してるし、いいのか
別の上級生らはたしかその曲者を追いかけていた記憶が吾輩にはあるのだが


「ましろー、おいで」
「にゃぁ」


主人に名を呼ばれ、一声鳴くと、捕まれて主人の膝の上に乗せられたら
・・・うぅむ、乗るのは好きだが、膝の上に乗せられたら主人の膝の上だからか、安定が悪く居心地が悪い
だがどくと主人が落ち込むので、それはしたくない

もぞもぞと立ったり座ったりを繰り返しながら、マシな位置を探す
しばらく繰り返して、一つの体制に落ち着くと、主人が頭を撫でた


「良い子だねぇ、その猫」
「ましろっていう、僕の猫なんですー」


きゃっきゃと話される頭上の会話に、心の中で大人しいのは主人だけだと呟いておいた

微かに小さく聞こえた廊下を走る音に、落ち着いたのにもう退くのか、と少しだけ憂鬱になった




鶴町伏木蔵の猫










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