文次郎のにゃー 吾輩には忍術学園という場所で、ギンギンに忍者していると言われている主人がいる だが、その主人は意外と優しいのだ 「今日もまた後輩に無理させちまったな・・・」 夜着でぱちぱちと珠をはじきながらそうこぼした主人は、相変わらず隈が濃い 無理をしているのは吾輩も分かってるが、後輩にやらせないようにと持ち帰って、帳簿とやらをつけながら、こうして気に悩んでいる主人を見ていると どうしても寝ろと吾輩も叫べないのだ まあ、吾輩が何か言ったところで、主人にはにゃーとしか聞こえないが しかし、主人よ 夜着一枚で寒くはないのだろうか? よく忍者たるものと言っているが、それは主人にも言えると吾輩は思うのだが 吾輩は、部屋の隅に畳んである掛け布団をくわえて引っ張った ずり、と音がする その音に気がついたのか、主人がこちらを向いた 「ましろ?」 「にゃあ」 「・・・かけろってか?」 じぃっとこちらを見てくる主人に、吾輩もじぃっと見つめ返す 吾輩じゃなくて、主人がかけるのだ、分かれ、主人よ 吾輩がじぃーっと見たままなので、意図するところが分かったのかそうでないのか、吾輩には分からないが、主人が立ち上がった そして吾輩をひと撫ですると、吾輩が引っ張った掛け布団を肩にかけてまたぱちぱちと珠をはじき始めた どうやら伝わったらしい 「にゃあ」 吾輩は一つないて、主人の座った足に頭を擦り付けると、少しでも吾輩の体温が主人に伝わるようにと身体をくっつけて丸まった ・・・がんばるが良いよ、主人 吾輩は主人があまりにも無理したときだけ、仙蔵殿か伊作殿に強制的に寝かせてもらうように働きかけにいくさ 吾輩とて忍の飼う猫よ、それくらい企ませてくれたって良いだろう? 潮江文次郎の猫 戻 |