もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

孫兵のにゃー



がさがさっと草がなる
吾輩はじいっと草の揺れる先を見つめる
ひょこりと顔を出したのは、蛇の頭


「にゃう(ジュンコ殿じゃないか)」
「シュー(ましろ、こんな所にいるなんて珍しいわねぇ)」


普段主人から離れないというか、離されないからなかなか話す機会も少ないのである
吾輩がジュンコ殿としばらく話していると、吾輩の耳がぴくりとある音をとらえた


「・・・コー!・・・ジュ・・・コーッ、ジュンコーッ!」
「にゃん(行かなくて良いのかい、ジュンコ殿)」


主人がジュンコ殿を呼ぶ声が聞こえた
吾輩が聞くと、ジュンコ殿はいたずらに笑う
そして、私が愛されていると分かるのだからたまにはいいものでしょう?と
・・・吾輩はたまにはじゃないとおもうのだが・・・
しかし、若輩者の吾輩にはとやかく言えないのが現実だ


「ジュンコ!」


がさがさと草をかき分けて、顔をだす主人に、ジュンコ殿は嬉しそうに鳴いた
主人も、嬉しそうにジュンコ殿を抱き上げると、いつものように首に巻いて、頬ずりをした
吾輩は相変わらずラブラブな二人をみで、ため息をついた




伊賀崎孫兵の猫









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