伊作のにゃー 「いてててっ!」 「にゃう!」 「もう・・・ましろ、僕が怪我するたびに噛んできて・・・僕の事きらいなの?」 主人の事は嫌いじゃないし、むしろ好きだが、怪我をしてくるから悪いのだ、と全力で言わさせてもらう 吾輩はこのドンくさくて不運委員長と言われる善法寺伊作の猫である 主人は不運だ不運だと言われつつ、ずっと過酷な忍者の世界を生き残ってきたつわものであるのだ それなのに、すぐに落とし穴に引っかかるし、こけるし、吾輩も何度主人がこけたときに吹き飛ばした薬を浴びそうになったことか! 「にゃん」 「あぁもう、そっぽ向かないでよ、ましろ〜」 ぺしりと尻尾を一つ振って答える しばらく反省しているが良い、主人は優秀なのに自分を卑下しすぎなのだ 吾輩が認めているというのに、自分が認めないなどと、吾輩はそんな主人は好きではない 「にゃーう」 「うん?お散歩に行くの?気をつけてね」 ごりごりと薬を作り始めた主人に、また不運を発動して薬をかけられたらたまらないと、吾輩は散歩に行くことにした 今日は天気が良いし、どこかで昼寝でもするか そうして部屋を後にすると、すぐ後ろでがっしゃーんという大きな音と、あぁぁ!と叫ぶ主人の声が聞こえた 「・・・にゃぁ」 吾輩はため息を一つつくと、戻るまでに部屋が片付いていることを祈りつつ、とことこと日が差す暖かな場所を目指して歩き始めた 善法寺伊作の猫 戻 |