もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

留三郎のにゃー



くぁ、とあくびをして、吾輩はのびをした
お気に入りの木陰から抜け出して、太陽の光を浴びる
吾輩は眠る場所を変えるべく歩き出した

学園には様々なお気に入りの場所があるが、一番のお気に入りがある
それは主人の作ってくれた吾輩専用の箱だ
猫は狭い場所が好きであるが、吾輩も例に漏れず狭いところは落ち着くため好きである
そんな我輩のために、廃材を利用して作ってくれた箱が、倉庫近くにあるのだ

すたすたと倉庫に近づけば、複数の声
どうやら委員会活動をしているらしい
中心で指示をしつつ釘を打ち付ける主人の姿が見えた


「あ、ましろさんだー!」
「お、来てたのか、ましろ」
「にゃーぅ」


ナメクジをよくつれている子供が吾輩に気づき声を上げた
それに釣られて面をあげた主人が、吾輩に気づき声をかけてきた
吾輩は一声鳴いて応えてから、いつもの箱へ向かう
地面よりも高く作られた場所に、軽い足取りで段差を伝い登れば、しゃがんでいた主人たちを見下ろす形になった
箱にくるりと丸くなれば、箱の木目が視界に広がり、主人たちは見えなくなった
楽しそうな声を聞きながら、我輩はまどろみに身を任せた


食満留三郎の猫








- 20 -