もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

長次のにゃー



ぽかぽかと日光が暖かく、うとうととしながら丸くなる
時折吹く風は冷たいながらも、穏やかな晴れ
いつもは騒がしい主人の後輩も、今日はあるばいととやらとその手伝いやらで居ない
たまにどこからか人を捜す声も聞こえるが、それもすぐに遠くなる
全くもって平和な日だ

そんなことを思いながら目を閉じていれば、小さく足音を拾い、ぴくりと耳を動かす
だんだんと近づく足音は聞き覚えのある物
警戒を解いた吾輩は、けれど頭をむくりと起こして足音の方向を見つめた

吾輩がにゃあ、と一つ鳴いて出迎えたのは、吾が主人だ
古傷の残るその顔は、無表情ながらも雰囲気が柔らかい
主人は吾輩の横に座ると吾輩の頭を撫でた
日の光でぬくぬくと暖かいところに、主人の手の動きが相まって気持ち良く、うとうととし始める


「・・・眠いのならば、寝ると良い」


ぼそり、と呟くように吾輩にそういった主人に、吾輩はあらがうことなく睡魔に身をゆだねた


―――――
side:長次


規則的に上下する背をゆっくりとなでながら、借りてきた本を取り出す

猫の居る場所は気持ちの良い場所が多いと知ったのはましろが来てからだが、問題の起こらない平穏な日にましろを探すのは既に日常だ
今日も書物の整理をした後、ましろを探せばやはり日の光が気持ちの良い縁側に居て
一つ鳴いて私を出迎えつつも、眠そうな雰囲気
ゆっくりと背を撫でれば、日の光で暖められたのか、触った場所がとても暖かかった

寝ればいい、と小さく話せば、理解したかのようにまた丸まったましろ
私はそのままましろをなで続けながら、本を読み進めた


中在家長次の猫








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