三木ヱ門のにゃー 大きな瞳が瞬きも少なくこちらを見つめる 吾輩はそれにふしゃーっと毛を逆立てながら後ずさった 主人公の目を盗み、何かと吾輩にちょっかいを出してくる目の前の人間・・・綾部喜八郎は、吾輩の天敵である なにもされなくとも逃げだし、時には一死報いろうと爪を出す そんな彼に、吾輩がよく遭遇するのは主人が彼とクラスは違えど同じ学年であり 主人が愛する火器たちの訓練にでている間、廊下や草の上で昼寝をするからである あまり主人の部屋からは離れない吾輩であるが、綾部喜八郎は穴を掘るべく動き回るがゆえ、吾輩が気持ちよく寝ていてもいつの間にか近づき、吾輩の邪魔をするのだ 「・・・おいで、ましろ」 ちょいちょい、と手招きして吾輩を呼んだが、吾輩は少しのばされた手に向かってパンチを繰り出す ぺしん、と軽い音がなった それにぱちぱちと大きな目を瞬かせた 心なしか表情がわくわくしているように見て取れる もう一度伸ばされた手 変わらずまたパンチした じぃっと睨み合う目 「何してるんだ?」 「あ、三木」 主人の声に、吾輩は一直線に綾部喜八郎の横をすり抜けて主人の後ろに回った 主人に引かれていたユリコ氏の台車に飛び乗る それを見た主人はため息をついた 「またましろにちょっかいだしてたのか。いつも嫌がっているんだからいい加減にしてくれよ」 「だって面白いんだもの」 「僕の猫なんだから、あまり虐めないでくれよ」 はぁ、とため息をついて主人は言った 綾部喜八郎は飄々としながら主人の後ろにいる吾輩にちらちらと視線を向けてくる 吾輩はその視線にふるりと体をふるわせながら、きっと明日も同じ事をやるんだろうとため息をついた 田村三木ヱ門の猫 戻 |