もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

小平太のにゃー



「寒い・・・」


その言葉と共にぎゅうっと圧迫される身体
みぎゃ、と吾輩は言葉を漏らす
それで気がついたのか、主人の目がうっすらと開いた


「ましろかー?なんだ、寒いのか。なら私と暖をとろう」
「み゛ぃ・・・」


つらい、主人、放してくれ・・・っ
そう思うも、人間の主人に伝わるはずもなく
寒い寒いと言いながら、主人は吾輩を抱きしめる力を緩めることはなかった




いつまでこの体制が続いたのだろう
吾輩の意識が浮上すると、身体の圧迫感は消えていた
頭を上げれば飛び込んできたのは、同室である中在家殿に怒られる主人の姿


「――、――・・・」
「だってましろが寒いだろうと思ったんだ」
「―――」
「うー・・・すまん、長次」


しゅん、とうなだれて叱られる主人
吾輩は立ち上がると、主人の横に座る
主人は、吾輩によかれを思ってやったことであり、そのすべてに悪意はないのだ
それを吾輩も中在家殿も分かっているから、結局主人を許すのだろう


「ごめんな、ましろ」
「にゃーう」


がしがしと撫でながら吾輩に謝った主人に、吾輩は一声鳴いて応えた




七松小平太の猫









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