伝七のにゃー 吾輩が部屋にはいると、カラカラとなにかが回り始める音がした 吾輩はその音にさっと飛び、移動すると、その後にからーんと乾いた音を立てて、吾輩の居た場所に金ダライが落ちてきた 吾輩内心でほっと息を吐く 「またましろに避けられちゃった」 「僕のましろになんてことするんだよ兵太夫!」 おもしろくなさそうに言ったのは吾輩の主人と同じ井桁模様を身につけた笹山殿 カラクリ好きの笹山殿は、ことあるごとに吾輩に何か仕掛ける そのため、作法室に入るときは最初から疑ってかからなければならないのだ、全く面倒くさい 主人も止めようとして下さるが、止められないのが現状だ 「こらこら、そろそろ止めないか」 「でも立花先輩っ」 「おまえが構ってやらぬから、ましろが待ちぼうけを食らっているぞ?」 作法委員長である立花殿が吾輩を抱き上げると、2人を止めて主人にそういった 立花殿は吾輩を主人に渡すと、先ほどまで座っていた場所に戻った 吾輩は主人を宥めるように頬をひと舐めしてやる 「伝七はましろが仲が良いな、良いことだ」 そう言って笑った立花殿に、主人は弾んだ声ではい!と答えた 吾輩もそれに続いてにゃあと鳴くと、主人の嬉しそうな雰囲気が少し増えた気がした 黒門伝七の猫 戻 |