もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

左近のにゃー



吾輩はいつも主人に怒られている
ただ、それは主人の心配の裏返しだと吾輩も知っているが故、こうして語ることが出来るのだが

ぱたぱたと小さな足音
日の傾きからして、当番を終えた主人だろう
今日もまた怒られそうであるな
吾輩は自分の体を見下ろし、そう思った
すすっと戸が開き、ひょこりと顔を覗かせたのはやはり主人


「ましろっ、また汚れてるし・・・」
「にゃーう」


悪いな主人
だが私も散歩は譲れないのだ
足はきちんと舐めてから入っているぞ?
そう主張するように一つ鳴いた

「あっ、怪我っ!こう言うのはどこでつけたかわからないし、菌がどこではいるかわからないから放置したらダメだろっ」


がーっとそういった主人に、吾輩はげんなりとした
・・・主人、人間と同じように扱ってくれるのは嬉しいが、そういう心配は人間よりも免疫の高い吾輩には無用だぞ?
と言っても、主人は聞こえていないだろうが・・・

主人は吾輩の怪我の周りの毛を拭いてから、消毒液をつけて、包帯をくるくると巻いた


「これでよし、もう怪我するなよ、ましろ」


無理な相談だ、主人
治療の後、撫でながら吾輩にそう言った主人だったが、吾輩は即座に突っ込んだのだった
まぁ、主人にはわからないのだがな・・・




川西左近の猫










- 6 -