もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

君に誓う






家臣に呼ばれて、父上と母上の待つ城へ帰り、早々に二人のもとに参上する
神妙な面持ちで、二人は私たちを見た


「雷蔵、三郎」
「「はい」」
「お前達は双子だ、そのことは、いうまでもないね」


父上は確認するように、私たちにそういった
雷蔵と私は双子、雷蔵が姉で私が弟
私たちは頷いて肯定した


「・・・世間で、双子というのはとても忌み嫌われたものであるというのは?」
「え・・・」
「・・・」


雷蔵が目を丸くした
私は、既にそれを知っていたので、唇を噛んでうつむく
私たちの様子を見た父上は上座から降りてくると、私たち二人をいっぺんに抱きしめた
母上も、父上に習って上座から降りてくる


「すまない、雷蔵、三郎・・・私たちにはどうにも出来んのだ・・・」
「ごめんなさい・・・、ごめんなさいね・・・っ」


父上が沈痛な面持ちで謝り、母上が涙を流して謝りながら私たちを抱きしめる
悲しむ両親の姿に、困惑した面持ちの雷蔵
助けを求めるように、雷蔵は私を見た
両親の言わんとすることを理解した私は、ぼろぼろと涙を流す


「父上・・・母上・・・っ!」
「ごめんなさい・・・三郎・・・!貴方は私とあの人の息子、それは何処にいたって変わらないわ・・・っ」


ぎゅっと痛いくらいに抱きしめる母上の腕の中で、私は声をあげて泣いた
雷蔵も、私に釣られてか、分けも分からぬまま父上の腕の中で泣いた





そして数日後
私は家臣の一人の家に引き取られた
そこから私は、黄瀬 三郎ではなくなり、ただの三郎になった
黄瀬を名乗ることは許されない
あの場所で、両親と、雷蔵と揃って笑いあうことはもうないのだと

唯一のつながり
それは雷蔵と私が双子であること
はなれていても繋がっている、そんな不思議


「雷蔵・・・」


この空は雷蔵に繋がっているのだろう
押し花にして、栞にしたあの日雷蔵に貰った花に私は誓う

きっと、いつか君の隣で、支えよう
あの場所に戻ろう
黄瀬と名乗れなくとも、雷蔵と私は双子で、確かに見えない絆で繋がっているのだから











- 3 -