もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

良い不破の日!








「雷蔵っ!」
「三郎?」
「これ、雷蔵に」


そういって三郎が僕に渡したのは髪紐
不思議に思ってきょとりとしながら、僕はありがとう、と受け取った
そんな僕に三郎は満足したように笑うと、それじゃ、また後で!と走っていった
・・・なんだったんだろう?
その後、僕が委員会に向かえば、中在家先輩がいた


「遅くなってすみません、先輩」


僕が小さく謝ると、先輩は問題ない、大丈夫だと言って僕の頭を撫でた
そのまま中在家先輩と古くなって、紐が切れそうな本を修繕する
この作業をするうちに、裁縫だけはそれなりにできるようになったなぁと思いながら、針と糸で本を纏めなおしていく
そうして集中していると、後ろから肩を叩かれた
振り向けば、中在家先輩が立っていた
あたりは既に暗くなり始め、日没が間近であることを感じさせる


「そろそろ、終ろう」
「はい、じゃあ、僕片付けてきます」


手元にあった直しかけの本を纏めると、要修繕の箱に収めた
そして小走りで鍵を閉めるべく扉の外で待つ中在家先輩の元へ向かった
カチリ、と鍵を閉める音がなって、中在家先輩がお疲れ様、と言って僕の頭をぽすりと撫でると、去っていった


「あ、雷蔵、今終ったのか?」
「ハチも、生物委員終ったんだね。お疲れ様」


後ろから名前を呼ばれた
振り向けばそこには泥だらけのハチが佇む
手ぬぐいなどを持っているところから、どうやらこれから風呂に向かうようだった


「あぁ、また毒虫が逃げてさ、総出で捕まえてたんだ」
「わぁ・・・それはまた、お疲れ様・・・」


ははっと苦笑しながら、ハチはそれじゃ、風呂いってくる、と言って僕の頭をくしゃりと撫でた
今日はよく撫でられるひだなぁと思いながら、少し高い位置にあるハチの顔を見る


「じゃ、後でな」
「うん、また」


そういって僕らは分かれた




夕食の時間になって、僕らはいつも通りご飯を食べる


「あ、雷蔵、これ雷蔵にやるよ」
「え?どうしたの?兵助が豆腐くれるなんて・・・」


珍しいね、と僕が驚くと、兵助はぱちぱちと目を瞬かせた
んー、といいながら兵助はまあ、気にするなよと言って味噌汁を啜った


「じゃあおれからも、はい、雷蔵」


勘右衛門から渡されたのは小さな小物入れだった
表面には細工が施してある


「あ、ありがとう・・・」
「なんだ、みんな何かしら用意してるのかー」


ハチがなんだか困ったようにそういった
僕はこんなに何かしら貰うのが不思議で、みんなに問いかける


「ねえ、何で今日はみんな僕になにかくれるの?」


4人の視線がこちらに集中した
ご飯を噛んでいた三郎が飲む込むと、笑った


「だって11月28日だからな」
「そうそう」
「・・・?別に特別な日じゃ・・・」


三郎の言葉に頷いた勘右衛門に、僕は不思議そうに呟いた
ハチがぴし、と人差し指を立てる


「だってほら、11月28日は雷蔵の日だからな」
「いいふわ、っていう語呂合わせだよ」
「だからな」


語呂だと兵助に言われて、それに続いて三郎が意地悪そうに笑う
そして他の3人も、各々が笑顔を浮かべた


『いつも、ありがとう、雷蔵』


そう、4人で口をそろえて言われた言葉に、僕は驚くと同時に、恥ずかしいような嬉しいような気持ちになって
うん、と一つ、頷いた




良い不破の日!








ということで、雷蔵良い子、マジ天使!という日に短編書いてみた
日付変わったのでnotフリー