もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

花言葉 ななつめ「愛情の絆」







その日、私は夢を見た


「・・・ここ、は・・・?」


記憶にある景色とは違う
昔の広い屋敷のような・・・
確実に、私が9年前にいつも居たその場所ではなかった
きょろきょろと周りを見渡しながらも、なにかに導かれるように歩いて
そうして着いた場所で私が止まったとき、ぎしり、と板張りの廊下が鳴った


「誰だ」


首元に冷たいもの
けれどそれから恐怖を感じるよりも先に、私が感じたのは安堵
前に見えるそれは、朝顔の花
朝露を葉にのせ、朝日にきらきらと輝く
私は問われているのにもかかわらず、朝顔から目を離せずに、ただその花を見つめるだけだった


幼い夢が頭をかける


「・・・朝顔、が・・・すき、なの?」
「・・・・・・・・・」


いつかに、初めて私が言った言葉
その言葉に、首元に宛がわれていたそれは、少しゆるくなった
そして、確かめるように、呟く声


「朝花、か・・・?」
「・・・・・・長次、くん・・・・・・?」


先ほどの安堵はだからだろうか
私が呼ばれた名前に、確かめるように彼の名前を呼んで返すと、彼・・・長次くんは首に宛がっていたものを完璧に外した
私は振り向く
私よりも、頭一個分くらい高い身長
無表情で、顔に傷があったけれど、その顔は確かに幼いあの日に会った、長次くんだった


「紫苑、の・・・」
「あなたを、忘れない・・・忘れてないよ」


紫苑の言葉に、私はあの日渡した花の花言葉を紡ぐ
そうすれば、引き寄せられた体


「おかえり・・・」
「・・・ただ、いま・・・っ」


囁かれた声に、私は応えた







朝顔は、しおれ始めていた

けれど、彼女が消えることは、もうない



花言葉 ななつめ「愛情の絆」










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