もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

花言葉 いつつめ「短い愛」








「いつもいつも、貴方はナニを言っているの・・・!」
「・・・まま・・・?」
「流石に精神科に連れて行ったほうが良いんじゃないか?」
「・・・ぱぱ・・・?」


頭上で飛び交う口論と、"私"への言葉
私は何かいけないことをしたの?
私がいい子にしてれば、二人ともも怒鳴らない?私のことで言い合ったりしない?


「まま・・・ぱぱ・・・」


ぼろぼろと涙をこぼす
長次くんは居ないの?私、変な子なの?
もう言わないから、だから、私を捨てないで・・・




その日の夜、私はずいぶん前・・・お母さんが優しかったときに貰ったシオンの種を握って眠る
いつもの、長次くんに会う夢を見るために
いつものように、角を曲がればそこには朝顔を見る長次くんの後姿
私は彼の名前を呼んだ


「ちょうじくん」
「・・・朝花」


静かに私の名前を呼び返してくれる
それが嬉しくて、私はにこりとわらった


「きょうもきれいなあさがおね」
「あぁ・・・」
「おはなもよろこんでるわ、きっと。だってとってもだいじにされているもの」


私がそういって笑うと、長次くんは少しだけ怪訝な顔をして私に質問した


「朝花は・・・大事にされてないのか?」
「わたし・・・?・・・だいじに、されてるよ、ちゃんと」


ちゃんと、笑えたのかな
あんなことがあったから、私はその言葉に表情があっている自信は無かった
私は話題を帰るべく、持ってきた種を取り出す


「あ、あのね、ちょうじくんにこれをあげようとおもったの」
「・・・?」
「て、だして?」


差し出された手に託したシオンの種
何の種だか分からないようで、聞きたそうな長次くんに、私は悪戯っ子のように笑う
「なんのおはながさくのかはひみつ。でも、きっとちょうじくんがそだててくれれば、とってもうつくしくさくことができるとおもうから、あなたにあげる」


育ててくれる?といって長次くんに聞けば、彼は小さく頷いた
私はその答えに喜んで笑顔を浮かべる


「ありがとう、ちょうじくんならそういってくれるかなっておもってたの。けんとうちがいじゃなくて、よかった」
「大事に・・・そだてる・・・」「うん、ありがとう」


ありがとうの言葉が、少しだけ変かもしれなかったけれど、長次くんは何も言わなかった
そうして、私はふっと身体が軽くなるような感覚を覚えた


「あ・・・そろそろいかないと」
「そう、か・・・」
「うん・・・さよなら、ちょうじくん」


私は長次くんに手を振って、いつもの角を曲がった
浮上する意識
きっと私は、もう"ここ"に来ることは無い
それでも、私はきっとあなたを忘れない




花言葉 いつつめ「短い愛」










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