もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

花言葉 よっつめ「結束」









幼い頃、夢を見た
それはとても不思議な夢
私は平成の、発達した現代に住んでいるはずなのに、着物を着て、土の道を歩く
今にして思えば、ただの夢だといえるけれど、幼い私にとっては現実に近くて

ふらふらと当てもなく歩けば、人が居るのを見つけた
大好きな朝顔を見る男の子の様子を見て、私は歓喜する
気づけば話しかけていた


「きれいなあさがおをさかせたのね」


ばっと振り返った男の子は、私を見て不思議そうな顔をした


「あ・・・きゅうにはなしかけてごめんなさい、あさがおがとってもあいされていたようにおもえたから、わたしうれしくて・・・。あさがおすきなの?」


私がそう男の子に聞けば、男の子は少し考えてから頷いた
私はその返事に嬉しくなって、笑った


「そっか、よかった。そのあさがおもしあわせものね。だってあなたにとってもあいされているから」
「・・・花は、めでられるものじゃないのか?」


少し不思議そうにそういった男の子に、私は道端に捨てられた花や、ぐちゃぐちゃと踏まれる草花達を思い出した
「なかには、すてられちゃうおはなもあるの。だから、あなたのあさがおはとってもしあわせ。だってきれいなはなをほこらしげにさかせているもの」


私がそういうと、男の子はとても不思議そうな顔をした
・・・分からなかったら、分からないでもいい
それだけ、大事にしてくれているということだから
私はそんな男の子ににこりと笑う
そろそろ、"起きる"気がした


「いきなりごめんなさい。わたしもういかないと」
「・・・名前、は?」
「わたし?わたしは朝花っていうの。あなたは?」
「私は・・・長次、中在家長次、だ」
「ちょうじくん」


私は教えてもらった名前を何度か口の中で呟くと、長次くんに向かって覚えたわ、と笑った
そして、私は長次くんにまた会えたら会いましょうと言うと、くるりと背を向けて、民家と民家の間の狭い道に身体を滑り込ませた





ふ、っと浮く意識


「朝花?朝よ、起きなさい」
「まま・・・あのね、夢でおともだちができたの」
「まぁ・・・そうなの、良かったわね」


私は嬉しくてお母さんににこりと笑ったお母さんは、きっとそのとき、ただの夢だとおもっていたのだろうけれど
私にとって、夢は現実だった




花言葉 よっつめ「結束」










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