もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

花言葉 ふたつめ「平静」






毎日水をあげた花なのに、肝心の花が見れなかったのが悔しくて、次に花が咲くときは、ちゃんと朝に起きようと、そう思って次の朝顔を育てた


「あ・・・」


あった
ちゃんと花が咲いている
紫や青の花
それが私にはとても輝いて見えた


「きれいなあさがおをさかせたのね」


後ろから声がして、ばっと振り向けばそこには朝顔の花の色ような髪をした女の子が立っていた


「・・・?」
「あ・・・きゅうにはなしかけてごめんなさい、あさがおがとってもあいされていたようにおもえたから、わたしうれしくて」


あさがおすきなの?といわれて、私は少し考えると、こくりと頷いた
すると、その女の子はふわりと笑った


「そっか、よかった。そのあさがおもしあわせものね。だってあなたにとってもあいされているから」
「・・・花は、めでられるものじゃないのか?」
「なかには、すてられちゃうおはなもあるの。だから、あなたのあさがおはとってもしあわせ。だってきれいなはなをほこらしげにさかせているもの」


そのときの私に、その女の子の言葉はよく分からなかった
花を愛でる事は、私にとって普通の事で
一生懸命咲かせようと世話をすることは日常の一部だったから
女の子はにこりと笑った


「いきなりごめんなさい。わたしもういかないと」
「・・・名前、は?」
「わたし?わたしは朝花っていうの。あなたは?」
「私は・・・長次、中在家長次、だ」
「ちょうじくん」


女の子・・・朝花は、口の中で何度も私の言葉を呟くと、おぼえたわ、と笑った
朝花は、またあえたら、あいましょうと笑って、道の角に消えていった
振り向くと、朝顔は萎れ始めていた






花言葉 ふたつめ「平静」











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