もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

花言葉 ひとつめ「愛情」






注がれる水に濡れて、水滴をつける朝顔
朝日が水滴をきらきらと輝かせた


「・・・今日も、会えない・・・な」


ぽそりと呟いた声は、思っていたよりもずっと重かった







それは遠い昔の話
私が、学園に入る前
幼い頃から無口で、近所の子ども達から、遠巻きに見られていた部分があった
そんなときに、両親から貰ったのは一冊の物語集
私は本の世界にのめり込み、家で殆どをすごす子どもになった
両親はそれでは駄目だと思ったのか、私に植物を育ててみないかと言った
そうしてもらった朝顔の種
最初はどうして牽牛子(けんごし)なんてくすりの材料を、と思ったが言われたとおりに埋めて、毎朝水をやった
今にして思えば、きっとそれを買うのにとても苦労していたのだろうな
本も、牽牛子も高価なものであったから

そうして出た芽


「・・・!」


土から飛び出す緑の葉っぱ
私は嬉しくなって、植物の世話が好きになった
そうして咲いた花は大輪の朝顔
けれど、私はその花を見ることが出来なかった
代わりに見れたのは、しぼんだ朝顔の花
朝顔の名前の通り、その花の命は短く、私はがっかりとした

花が咲いた後には種が出来た
私はその種を集めると、もう一度朝顔を咲かせるべく、同じ場所に埋めた
大きな花を咲かせるように願いながら






花言葉 ひとつめ「愛情」












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