繋がる僕らと硝子玉 いろんな意味で気の抜けない授業が始まって、僕は作と一緒に街を歩いていた 今回の授業は、何も知らない人から何か貰うこと できれば、残る物が好ましい 僕らは、物を貰うのならば、露天商を覗いたりしていればきっと何かもらえるだろうと考えて、街の大通りに出た 「わぁっ!まつちゃん、お店がたくさん!」 「そ、そんなに急がなくてもお店は逃げない・・・でしょ!」 どことなく、口調がぎこちないのは多分いつもの口調が抜けないからなんだろうなーと思いながら、僕は作の腕をとった 「はしゃいではぐれちゃわないように、繋がせて?」 「っし、しかたないな・・・今日だけだから・・・ね」 僕は人混みではぐれるとみんなと全然違うところに行っちゃうから 僕は今、いちだから、ちょっとくらい、いいよね? どうか気づかせてくれないで 出来るだけ早く、葬り去って、いつもの僕に戻るから ――――― 一夜に手を繋がれて、俺は柄にもなくどきりとした 多分、顔が赤い ・・・一夜が前にいて、俺の顔が見られないのは、唯一の救いか? 俺は軽く手を引かれながら、ふるりと軽く顔を振って、思考を振り切った それ以降は授業を終わらせるために露天を回っていたら、ひとりの男に話しかけられた 「君たち」 俺は一夜と目配せする 一夜は軽く頷くと、男に言葉を返した 「私たち、ですか?」 「えぇ、そうです。先ほどから見るばかりで買おうとしないので気になっていたのですよ」 「あ・・・どこかの露天商の方でしょうか・・・?」 一夜が聞けば、違うと返され、歯の浮くような言葉を言われた まぁ、言われたのは一夜にだったけど 「あなたはとてもかわいらしくて、きっと似合う簪や帯留めがあるだろうに、見るだけに留めているのが惜しくてね」 「そうだったんですか・・・けれど私たち、母様のお使いでこの街に来たのですが、大きな市が見えたので、見るだけとわがままを言ってしまったんです」 簪や帯留めを買うようなお金は無くて、と一夜が少し残念そうにすれば、男はそれはもったいない、と言って、良ければ私が贈りましょう、と笑った その言葉に、俺は驚いた振りをして声を出す 「いいんですか?・・・良かったね、いち」 少しだけ低い一夜の頭に手を置けば、うん、と笑みを返してきて 俺たちは授業の課題を終わらせることが出来た が、俺にとっては、どこの男とも分からない鼻を伸ばしたヤツが選んだ簪や帯留めなんてつけて欲しくなくて 少し強引な気もしたが、どうにか俺が選んだ黄色い硝子に橙の花が描かれた簪を買わせた 俺が一夜の髪に刺してやれば、それは歩く度にちいさくちりりと鳴る 一夜が俺の分を選んでくれて、お金を出させるわけにいかないし、そんなの勿体無いと言ったんだが、一夜が折角選んだのに、と落ち込んだように言えば、男が勝手に勘定しにいった 一夜は矢羽音で、俺にも課題用のものがひつようだから、と言ってきたけど、俺にとっては課題とかよりも一夜が俺に選んでくれたって事が嬉しくて あぁ、俺、一夜に惚れてるんだ、と認めてしまえば、この気持ちを誤魔化すことなど出来なかったんだ 繋がる僕らと硝子玉 → 【title from】こうふく、幸福、降伏 様 戻 |