もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

しょうがねえからな






僕らが作の部屋に向かえば、まだ部屋はがらんとしていた
どうやらまだ帰ってきていないみたい


「一夜、作は?」
「僕と別の方に行ったんだけど・・・まだ帰ってきてないみたいだね」


待ってる間どうしようか?と左門に振れば、おなかがすいたと返ってきた
その言葉に、僕はため息をついた


「・・・左門、今の時間に食べたら、夕食が食べれないよ・・・」
「そうだけど、腹減ったものは腹減ったんだ」
「・・・あぁ、うん・・・」


分かっていてもそう言われた言葉に、僕は苦笑をうかべた


「しかたないなぁ・・・じゃあ僕の部屋にあるかりんとうもってくるから、動かないで待ってて」


元気のいい返事を背中に受けて、僕はとなりの自分の部屋にしまっていたかりんとうを持つ
戻ろうとしたときに、すこし遠くから作の怒った声が聞こえて、帰ってきたんだと分かった
迎えにいきたいのはあったけれど、置いてきた左門がまたどこかに行ったら大変だし、と本来の予定通りかりんとうを持って戻ることにした


「左門ー?」
「あ、一夜!」
戻ればにかっと笑って、左門が迎えてくれた
持ってきたかりんとうを渡せば、目を輝かせてさっそくぱくりと口に含んだ


「あ、左門見つかったんだな、良かった」
「おかえり、作、三之助」
「左門、なに食ってるんだよ」


僕と作を後目に、三之助は左門が持っているかりんとうに視線が行っている


「一夜に貰ったんだ」
「へぇ、いいな左門」
「おまえ等なあ・・・!」


相変わらずの2人の雰囲気に、作が怒鳴りそうになる
が、僕はそんな作に待ったを
かけた


「作、いいよ」
「一夜・・・でも、お前のだろ」


僕はみんなで食べるつもりのだったから、別に良いよ、と笑った


「一夜がそう言うなら・・・しょうがねぇな」



作は、そんな僕から視線をかりんとうを食べる2人に向けて、ふっと笑うとそう言った







しょうがねえからな





【title from】こうふく、幸福、降伏





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