もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

妄想で止まれない







「はっ・・・ぁ・・・や、ん・・・・・・さ、く・・・っ」


頬を赤くさせて俺の名前を切なそうに呼ぶ一夜
首筋をペロリと舐めて俺は言う


「一夜、可愛いな」
「ひぅっ!そ、な・・・かわいく、なんて、な・・・ぁあっ!」


びくりと一夜が跳ねた









がばっ!!と勢いよく俺は起き上がる
顔が熱い
周りを見て、俺はため息をつく


「・・・夢か」


俺、なんであんな夢見たんだよ
欲求不満なのか?
腕を組んで考えるものの、離れない夢の情景に俺はぶんぶんと首を振った
確かに俺は一夜のことが好きだし、恋人同士だけど、襲うほどいかれてねぇ!
俺はがしがしと頭をかいた


「さーくー」
「っ一夜」
「あ、起きてたんだね」


名前を呼ばれ、廊下から部屋をのぞき込んできた一夜の名前を呼んだ
寝ちゃったから、取りあえずそのままにしておいたんだ、と笑う一夜
俺は逸らしそうになる視線を必死で止めた


「一応、お茶貰ってきたんだよ。戸棚にあった饅頭も持ってきたから、一緒に食べよう?」
「あ、あぁ、そうだな」


俺は出来るだけいつも通りにしようとするが、どうにもどもっていつもみたいに話せねぇ・・・


「・・・作、やっぱりなんかあった・・・?」


心配そうに、一夜がそう言った
その様子に俺はぶんぶんと首を振った
ばれないようにしないといけない
だって、俺がそんな・・・一夜と・・・その・・・
・・・っだー!うじうじ考えんな、俺・・・!
とにかく、俺は一夜に俺が考えてしまったことを悟らせないようにするため、笑顔を作った


「俺なら平気だ。・・・それにしても、今日は平和だな」
「そうだねー、左門も三之助も迷子になってないし・・・」


話をそらすために出した迷子どもの話題に、一夜は苦笑した
本当に、あいつらが迷わなければこんなに楽なことはないのにな
そう思っていたら、どたどたと走る音
・・・ものすごく嫌な予感するんだが、俺だけか?


「・・・なんだろ、凄く嫌な予感が・・・」
「・・・一夜もか?」


そして足音がとまったのは俺達の居る部屋の目の前で
クラスメイトの俺達を呼ぶ声がした


「一夜!作兵衛!」
「あー・・・」「また、居ない・・・?」
「そうなんだよ!」


そいつは焦ったような顔をして、ごめん!探してくれないか、と頭を下げた
俺達は顔を見合わせると、立ち上がった


「しゃーない、探しに行くか」
「そうだね、じゃ、今日は僕向こうかな」
「おう、頼んだ、一夜」


そうして俺達はまた迷子探しに奔走することになる
一夜の事を意識しちまうよりも、迷子どもの相手してたほうが、俺の脳内は安全だ
・・・!






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【title from】こうふく、幸福、降伏





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