招かざる客 side:兵助 「入門表にサインしてください!」 いつものように、入門表へのサインをねだる小松田さんの声が聞こえた その声に、門のほうへ見れば、入ってきたお坊さんのような格好をした人 彼はぐるりと辺りを見回して、何かを呟いた とたんに、俺は背中に冷や汗が流れた すぐ横に居た雑鬼が俺の肩に乗ってくる 『・・・あいつ、俺達を毛嫌いするやつらだ。俺達みたいな害のないやつらまで全部払おうとする・・・』 ぽつり、と呟いた雑鬼 彼は俺の肩に居た雑鬼に気がついたのか、何かした ぎゃ、と耳のすぐ横で上げられる悲鳴 彼が近づいてくる 俺の中で、警鐘が鳴っていた 「危ないところであったな、主」 「貴方・・・は・・・」 「鬼に食べられるところであったのだぞ、主は」 にたり、と そんな擬音が似合う笑みを浮かべて 地面に落ちて、苦しみを与える者から逃れようと地を這って移動しようとしていた雑鬼を 潰した 霧散して消えていく、先ほどまで隣で喋っていた雑鬼 悪意も無い、ただ見える人が少ないから、数少ない見える人と話したい、と 相手をして欲しいのだと言って笑っていた雑鬼を、コイツは何の未練も無く殺した 危険ダ、コノ人ハ ガンガンと警鐘が聞こえる この人から離れなくてはと、頭では分かっているのに、地面に縛り付けられたように動かない足 「・・・この学園には」 良くないものが、沢山居るな 悪びれも無く笑った彼は、手始めにとでも言うように、すぐそこに埋めてあった、遥人の符を掘り返し、燃やした 結界なのだと、そう話していた遥人 忍者は人を殺すから、怨念が集まりやすいのだと、それを入れないように、結界を張っているのだと そう話しながら、この間新しいものに変えていた符 灰になった紙はぱらぱらと地面に落ち、学園に流れていた、どこと無くキレイに感じていた空気は、一瞬にして淀んだように感じた それを、普通になった、と言って笑う彼に、俺はぞわり、と寒気を感じた 「ちょっと、それ、遥人の符よ。何でアンタなんかが燃やしてるの」 ふわり、と降り立ち、そう言い放った由 その後ろに、綾部の姿もあった 由の姿を見た彼は、笑った 「おや・・・妖怪が居るのか、けれどやけに小奇麗なものだ」 「そこら辺に居る野良妖怪と一緒にしないでくれる?私は喜八郎のものだもの」 ふんっと鼻を鳴らしてそういった由 格好よく言っているが、最期の言葉でなんだか台無しになっている気がする 「・・・あの人、誰ですか。なんだか気味が悪い」 「綾部もそう思うか」 彼への俺と綾部の視線は、鋭いまま それでも彼の正体は分からず、ただ膠着状態が続いた 招かざる客 → 戻 |