離別か、否か 『遥人、半助さん、後1刻位で戻るよ、ついて行った藍が近いから』 ふっと外にいた蓮が入ってきて私にそう言った ・・・言ってくれるならもう少し早く言って欲しかったなぁ そんなことを思って微妙な顔になれば、どうした、と声をかけられた ・・・見えない人が居るんだった、気をつけなければ 私はなんでもありません、と応えて、それよりもお茶のお代わりは、と話をそらした 一刻半後 半助さんと、それについていった藍が戻ってきた 簾をくぐってただいまと入ってきた半助さんに、私はお帰りなさいと出迎える そして、伝蔵さんも 「あなたは・・・」 「久しぶりですな」 半助さんがこちらを見た ・・・それは私が知らない人を招きいれたことを非難しているということだろうか 「入れては駄目だった?」 「山田さんだったから良かったものの・・・知らない人は入れちゃ駄目だろう」 「でも・・・「とにかく、しばらく外にいなさい、私は山田さんと話しがあるから」・・・分かった」 私は見えないけれど蓮と、戻ってきた藍を連れて出て行った ――――― 去っていった後姿に、少し言い過ぎたかと反省する それでもどこかぼんやりとしたあの子に、本当に警戒しているのかと不安になるときがあるのだ 「半助さんのお子さんかい?」 「そういわれると、そんなものなんですが・・・1年ほど前に拾ったこ子どもでして・・・」 「そうかい・・・。ずいぶんとしっかりした子だね」 山田さんに言われて、私はえ、と声を上げた あの子はそんなにしっかりとしていただろうか? どこかぼうっとしていて危なっかしいと私は思っているのに 山田さんは笑みを浮かべる 「始めてあった私の目を見てから案内してくれたよ、アレは人を視る目だ。それに、家に通してから一回も私を下座にはしなかった、礼儀正しい子だよ」 「そう、ですか」 どこかその言葉に安心した きっと山田さんが来た理由は、前に誘われた教師の件だろう そうしたら、いまよりももっと長くあの子を一人この家に残していってしまう 見つけたあの日 彼の瞳はどこも写してはいなかった ただ虚空を見つめ、今にも消えてしまいそうなほどに無だった それを見た時に思い起こしたのは自分の幼少時代 だからこそあの子、遥人のそばに誰かがいなければと思ったのだ 私に足らなかったのは、人のぬくもりだったから 「・・・それで、私が来た理由は、分かってるんでしょう?」 「はい・・・学園の教師職、ですね・・・」 ――――― 川原に来た私は寝転がって空を見上げた 青い空を飛ぶ鳥達に混じって、時折空を横切っていく妖怪 ・・・あ、あの妖怪ドジだ、せっかく風に乗ってたのに落ちた 『ねー、遥人ー』 「・・・ん?」 『半助さん、遥人をおいてどっか行くよ、いいの?』 心配そうに蓮が私を覗き込んだ 私は薄く笑みを浮かべる 「そのときはそのときだよ。私には蓮も藍もいる、例え追い出されたとしても、お前達がいれば私は怖くない」 守ってくれるんだろ?といえば、蓮は当たり前!と元気よく、藍は静かに当然だ、と笑った 離別か、否か → 戻 |