陰陽師の勘 裏山は生徒もよく行く場所であるため、早めに対処しなければならない、と翌日の授業に出ず裏山へ向かった 木に登り陰の強い場所を探せば、遠くの方に見える黒い陰 山頂に近いその場所に、私は違和感を覚えた その場所は、ここら一帯の土地神の居わす場所 学園から見たときに鬼門であるその場所だが、土地神はきちんと祀っているし、つい一ヶ月ほど前にも参上し、場を清め、供物を持っていったばかりだ そこに陰がそんなに早く集まるだろうか 「・・・珠鬼」 『はいよー、なんだ遥人』 「あの場所、何故ああなっている」 そこら辺の雑鬼とともに居た珠鬼に問えば、珠鬼はわからんと返してきた その返答に、私は眉をひそめる 妖怪といっても力が弱く、何かしらの理由ですぐに己の身に危険の及ぶ可能性がある雑鬼たちは、違うことに敏感だ その雑鬼が分からない、とは 『あ・・・おれしってるよ・・・』 「本当か?」 『うん・・・よくわかんない、ここら辺じゃ見ない人間があそこに近づいてた』 格好だけはお坊さんみたいだったよ、とこぼした雑鬼に、ありがとう、と言葉をかけた ・・・どうやら、それが原因のようだ それにしても意味が分からない わざわざ、こんな山奥に、土地神を穢すようなことをする意味など無い あるとすれば・・・忍術学園だけだ 「・・・早く帰ったほうがよさそうだな」 すっと目を細めて、そう呟く 私は蓮と藍を従え、急ぎ陰の場所へ向かった ・・・大丈夫、学園には由も居るのだから そう、言い聞かせて 陰の場所にたどり着けば、視界が真っ暗になりそうに濃い陰 私は気を込めて ぱぁん!と響く音に、少し陰が薄くなる 「掛まくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊祓へ給ひし時に成り座せる祓戸の大神等 諸々の禍事 罪 穢有らむをば 祓へ給ひ 清め給へと白す事を 聞食せと 恐み恐みも白す」(祓詞を引用) 祓いの祝詞を奏上し、穢れを祓う それでもすべて祓われない穢れに、私は小さく舌打ちした 「ナウマク・サマンダ・ボダナン・サンサク・ソワカっ」 無限の光りをもつものである、無量寿如来の真言を唱え、陰を打ち払う 清められた空気は軽くなり、陰の気配が消える 先日行った清めの祝詞を奏上してから、私はまた来ることを土地神に約束し、忍術学園に戻った がんがんとなる己の内から聞こえる警報の音に、せかされるように 陰陽師の勘 → 戻 |