見えないお揃い side:兵助 ちょこん、と部屋の隅に転がる小さな何か 今まであんなものあっただろうか?と首を傾げれば、じっと見つめていたことに疑問を感じたのか、勘ちゃんがどうしたのー?と声をかけてきた 「ん・・・なんかあそこに小さい生き物が・・・」 「え、そんなのいないよ?」 「え」 勘ちゃんに主張すると、きょとんとして返された それでもその隅にいる何かは変わらずそこにいる ・・・なんだか心配になってきたな 俺たちはその正体を知るべく、困ったときは遥人に相談とばかりに、部屋を出た 「部屋の隅に小さい生き物?」 「勘ちゃんには見えなくて、俺には見えるんだ」 「・・・兵助に見鬼が出たか」 部屋でお茶を飲みながら何か書いていた遥人に相談すれば、お茶すすってから、ぽつりと呟かれた"見鬼"の言葉 確か見鬼は普通ならば見えないものが"見える"才能のことだったはず ・・・俺に見鬼? 信じられないという表情をしていたようで、遥人が苦笑しながら説明をしてくれた 「見鬼は生まれたときに有る無しは確定する。ただ、見える強さにも度合いがあって、強ければそれだけ力の強いものが見えるし、弱いとそこらへんにいる雑鬼にすら、なんか居るような気がするしか感じられない」 「じゃあ、兵助は見鬼があったってこと?」 「でも俺、ずっとみえてなかったけど・・・」 説明されたものの、それだけではまだ俺が何故見えるのかの答えにはならず 勘ちゃんと俺が聞けば、遥人が普通は今のなんだが、といって続けた 「兵助は今まで見鬼はあっても見えなかったんだろうな。ただ、近くに私がいることで、触発されたんだろう。稀にいるんだ、力の強いものに引きずられて見鬼の出てくる人が」 「へー・・・」 感心したように声をもらせば、勘ちゃんが兵助いいなーと零した 遥人は別に見えたところで何か日常生活で突出したものがでるわけじゃないぞ、と返していた 「珠鬼」 『あいさー、呼んだか、遥人!』 「こちら友人の兵助、お前たちが見えるそうだ」 『おぉ!じゃあこいつの部屋は遊びに行ったら相手してもらえるんだなっ?』 珠鬼と呼ばれた小さい鬼っぽいものが天井から降ってきて、遥人から言われたことに目を輝かせた 俺はえ、あぁと状況をうまく飲み込めないうちに頷いてしまう 『撤回は認めないからな!』 珠鬼はそう言って、どこかへ消えた それを見送ってからよく考えると、なんだか不味いことをうなずいてしまった気がする それに気づいて、俺はうなだれた 「雑鬼はみんないたずら好きで、遊んでほしいだけだ、害はない」 「・・・なら良いけど・・・」 俺を見ていた遥人が、どことなくうれしそうにそう言ったから、俺はまあいいか、と藍に淹れて貰ったお茶を啜り、お茶請けの大学をかじった 見えないお揃い → 見鬼は力の強い人の近くだと〜の下りは私の勝手な設定であり、事実ではありませんのでご注意下さい 戻 |