もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

お茶会







ずずっとお茶をすすって一息着いた後、伊作先輩がじゃあ、と切り出した


「一人ずつ、自己紹介しようか。まずは僕から、僕は六年は組で、委員長の善法寺伊作。よろしくね」
「伊作先輩は6年連続で保健委員をつとめる、筋金入の不運の持ち主だ」
「ちょっ、遥人っ、それは言わないでよ〜」


私が補足のように付け足せば、伊作先輩は焦ったように言って、困った顔をした
そんな伊作先輩に、でも言わなくてもきっとすぐ知れるところになるでしょうから、とさらりと言った
最初からお茶葉を散らばらせていたし、今更と言うものだろう


「・・・それをいったら遥人も一緒なのになぁ・・・」
「そうですが、私は立候補ですので。遅れたが、私は五年い組の御門遥人だ」
「この委員会で、唯一不運じゃない先輩が遥人先輩なんだぞ」


左近が私をそう言った
私はそんなたいそうなものじゃないさ、と言ってから、私は数馬と名前を呼び、流れを振る
それにはい、と応えた数馬、そしてその自己紹介の後に左近が自己紹介する
そうして、ぽやーっとしたどことなく暗い子と、かちこちした表情の眼鏡の子の一年生の番になった


「僕は一年ろ組の、鶴町伏木蔵ですー」
「わわ私は、一年は組の猪名寺乱太郎ですっ」
「伏木蔵に、乱太郎だね。二人とも、よろしく」


にこりと緊張をほぐすように笑った伊作先輩に、強ばっていた眼鏡の子改め、乱太郎の顔の強張りが緩んだ


「あ、そういえば遥人、これは貰っていいのかい?」
「どうぞ。数馬も左近も、伏木蔵も乱太郎も遠慮せずたべるといい」


そういえば、笑顔を浮かべて伏木蔵と乱太郎が手を伸ばし、左近と数馬は少し申し訳なさそうに手を伸ばした
それを見ながら、今日は平和な委員会になりそうだ、と心の中で呟いた




無事に、何事もなく、と言う言葉が言えた今日の委員会
部屋に戻れば、私以外全員集合し、5人にお茶を入れる藍


「来ていたのか」


そう言いながら座ると、おかえりと口々に返された
藍がすぐに私の分のお茶を入れてくれたので、それを一口飲んで息をついた


「さっきはありがとな遥人、助かったぜ」
「あぁ、どういたしまして。喧嘩にならなかったか?」
「元々が喧嘩みたいなもんだったし、1年だからかわいいもんだ」


少し喧嘩になったのだとその言葉で察し、新たな火種を与えたようで、すこしばつが悪くなった
それに気づいたのか気づいていないのか・・・ハチは助かったのは確かだ、と付け足して、茶菓子であるせんべいをばり、と噛んだ
・・・あれは私が用意していた中で一番貴重なものだった気がする・・・出したのは三郎か
学級委員長委員会で使うからか、そう言うのに詳しいからな


「これウマいなー、どこのやつなんだ?」
「東にあるやつだ、並ばないと買えない、と有名だな」
「え゛・・・良かったのか?」


聞いてきたハチに事も無げにそう返せば、焦ったように聞いてきたので、構わない、と返す
だってどうせこの部屋でお茶をするのなんて此処にいる4人だけなのだ
そのために買ってきたと言っても過言ではないのだし、食べたところでなにも言わない
そう説明すれば、ハチは安心したように、改めてせんべいをかじった
余談だが、調子に乗っていろいろ出そうとした三郎は雷蔵に怒られていた
自業自得だな




お茶会






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