もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

不運×4







私は左近を抱き上げる
素直じゃないのが全体的な今年の二年生の傾向らしいが、うちの左近はその傾向が他より弱い・・・らしい
故に横抱きをするのははばかられたのだが、俵のように方に担ぎ上げるのは腹部を圧迫して痛いだろうし、脇に抱えるのも持ちにくい、と結局横抱きに抱き上げる


「うわっ、せ、先輩っ?」


びっくりした声を出す左近に、私は心の内で謝ると、すぐに穴の外にでた
そして怪我のないことを確認すると、再び穴に飛び込んだ


「すまない、少し苦しいかもしれないが、二人とも脇に抱えて構わないだろうか」
「大丈夫です」
「僕も平気です〜」


私はそう言ってくれた二人にありがとうと感謝の言葉を言ってから二人を脇に抱え、すぐに穴の外へ飛び出た
無事着地すると、すぐに二人を地面に下ろす
ありがとうございましたー!と挨拶をした二人に、口元がゆるむのが分かった


「あ、先輩笑いましたか?」
「乱太郎、この先輩の表情分かるの〜?」
「何となくだけど・・・」


少なからず表情がわかりにくいと言われる私だが、もちろん表情はあるのだ、初対面で分からないだけで
ただ、初対面で分かったのは彼が初めてだった


「人の気持ちが分かる、良い人になりそうだな」


ぽす、と軽く頭をなでてそう言うと、土をはたいてやり、一年生二人の手を取った


「さ、伊作先輩が医務室で待っている。いこうか」


そういうと帰ってきた元気な返事に、もう穴に落ちることのないようさりげなく避けながら医務室に向かった


不運×4






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