親鳥と雛鳥 「はい、口あけてねー」 「・・・伊作先輩、お粥は飽きました・・・」 「だーめ!やっと普通に起きあがれるようになったんだから、無理はしないの!」 食堂のおばちゃんに作って貰ったお粥を掬ったレンゲを目の前に差し出した伊作先輩に、私は少し嫌そうにそう言った すると伊作先輩は、くわっと体を乗り出してすこし語尾を強くした ・・・まぁ、伊作先輩は顔立ちが優しげだからか、そこまで威力はないのだけれど 私は小さくため息をついた 「でもですね・・・もう2週間お粥なんですよ?さすがに飽きますよ・・・」 私が目覚めてから、今日で丁度3週間 最初は重湯からはじまり、一番最初などお粥はどろりとした白い何かで、ご飯粒の形すら見えなかった そこからすれば、今のお粥はご飯粒も見えるし、良くはなっているのだが・・・お粥には違いないのだ 味付けは変わっているとは言え、ほぼ変わらない触感だと、さすがに飽きるのだ それを伊作先輩も夏目先輩も分かってはいるのだが、保健委員の役目の方が大事らしく、そこは妥協してもらえなかった 「分かってるけどね、でも遥人の怪我は本当に酷くては、だめかもしれないと思ったんだよ」 レンゲを置いて、少しうつむき気味にそう言った伊作先輩 怪我を負ったときは暗くてよく見えはしなかったが、伊作先輩や夏目先輩、それに新野先生が言うには、内臓が見えて、出血も多く、物凄く危なかったらしい 死ななかったのは奇跡にも近いのだと、そう言われた 「僕は遥人が心配だよ・・・また大けがしそうで・・・」 「さすがにそう連続しては・・・」 「連続もなにも、まず怪我しないようにしなさいっ」 ぺしんと軽くおでこをたたきながら伊作先輩がそう言った まぁ、その言葉は最もな言葉だから、大人しく聞く 私が命に関わる大けがをしたのは本当のことだし、いくら私しか"そういうこと"をできる人が居ない為に仕方がない事といえど、少し自分の力を過信していた部分がないだなんて言い切れない 「善処します」 「・・・はぁ、まぁ、忍者だし、仕方ないけどさ・・・」 少し間をおいてから、ため息をついてそう言った伊作先輩 そしてぶつぶつと、そこははいって言おうよ・・・とふてくされたように小さく言った 分かっているのだ、私も、伊作先輩も、夏目先輩も 忍者である限り、怪我をすることも、死ぬことも、仕方のないことだと ただ、この箱庭の中に居る間はせめて、と きっと学園の中にいる人ならばみんな思っていることなんだろう ただ、口に出さないだけで 親鳥と雛鳥 → 期間長いですかねぇ・・・;/font> 戻 |