もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

まどろみの中の目覚め








ふっと意識が浮上して、目を開ければ、眩しいと感じる
・・・あぁ、私は助かったのか
そう感じた
けれど、声を上げることも億劫で、まだ意識も半分夢見心地といえようか
なんだかはっきりしていない感じがした


「・・・遥人?」


名前を呼ばれた
私はそろりと目を開ける
日の光りが、やはり眩しく感じる


「っよかった・・・!新野先生、目を覚ましました!」
「本当かい?」


新野先生と伊作先輩が私を覗き込む
私はこくんと頷いて返した


「痛いところはどこかあるかな?」


新野先生のこの言葉には、私は少し考えてからまた頷く
多分、喰われたところだろうが、上向きであるためにまだ少し痛むだけですんでいるが、動いたら激痛が走ることだろう
けれど、今はただ、疲れたから寝かせて欲しい
そう考えながら、うとうとと目を閉じそうになる


「・・・眠いようですね、問診はまた起きたときにしましょうか」
「今はゆっくり休んでね、遥人」


私は二人にまた一つ頷いて返すと、目を閉じる
意識はすぐに暗闇に沈んだ




―――――





「思っていたよりも、大丈夫そうでしたね」
「そうなんですか?」
「はい、それこそもう少しで臓器に到達していそうでしたから・・・」


ダメかとも思いましたよ、と心底安心したような新野先生に、やっぱり本当に危なかったんだと改めて遥人に視線をやる
すぅすぅと寝息を立てる遥人は、未だに青白い顔で、ぱっと見ただけでは、死んでいるようにも見えるから、少し不安になるのだ
それでも、今日起きたことは凄く進歩だ


「・・・あ、久々知とかに教えないと」
「それには及ばない」


呟くと返ってきた声
僕と新野先生以外誰もいないはずなのに、と立てひざをし、あわせに手をいれ、クナイをいつでも取り出せるようにして周囲を見る
と、そこには人であるのに耳と尻尾のついた男の人
僕はぽかーんと表情を崩した


「えっと・・・だれ?」
「俺は遥人様の使役妖怪、藍と申すものだ。主人の友人殿には俺から伝えさせてもらう。貴方は主人を診ていてはもらえないだろうか」
「え、あ、伝えてくれるなら、よろしくお願いします」
「承知した」


彼は一つ頷いてそういうと、ふっと姿を消した
その事実に、やっぱりついて行けなくてぽかーんとする
・・・妖怪?え、使役妖怪って、使役って使役だよね?
・・・遥人って、何者なんだろう・・・
少しだけ、疑問を覚えることとなった





まどろみの中の目覚め







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