もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

血塗れの一報








遥人が大怪我をして帰って来た
それは起きてすぐに善法寺先輩が俺達に教えてくれたことだった
善法寺先輩も、昨夜は当番の日ではなかったというのに、呼び出されて治療の補助をしていたらしい


「そんな・・・遥人が・・・?」
「僕も信じられないよ、遥人は4年生って言っても凄く優秀なのに・・・」


とにかく伝えたからね、と善法寺先輩は医務室に戻るのかきびすを返した
俺は勘ちゃんと一緒に、このことを三郎たちに伝えるべく歩き出す
その足は、走るとまでは行かなくても、それに近いほど早い
無限に続くような錯覚を起こす廊下を進み、俺達は三郎と雷蔵の部屋の戸を明けた
思っていたよりも力が入っていたのか、スパン!と大きな音がした
その音に吃驚したのか、二人の目がこちらを向いていた


「どうしたんだ、朝から」
「遥人が、大怪我して帰ってきたって・・・!」


勘ちゃんが辛そうにそう叫んだ
その言葉に、三郎も雷蔵も顔色を変える
朝からの大きな音に、なんだなんだとこちらに来たハチにもその言葉が聞こえたのか、廊下の途中でぴたりと足を止めた


「・・・・・・遥人が、かよ?」
「じゃあ、今遥人は医務室に居るの・・・?」


雷蔵の言葉に、俺と勘ちゃんは頷く
頭に浮かぶのは危なくないものだからと言っていた言葉を信じて、送り出した数日前の遥人の顔
あの時はこんなことになるだなんて思わなかったんだ
ぎり、と奥歯を噛む
今だってすぐにでも医務室に行きたい
でも、絶対安静だからって、追い返されるのは目に見えていて
いや、きっとそれよりも意識の無い遥人を見るのがいやなんだ

怖い

その気持ちがきっと一番しっくり来る
遥人を失うのが怖いんだ
他の誰を失うのも怖いけれど、それでも、遥人を失うが一番・・・!

・・・いち、ばん?
俺、何で遥人のことだけ別に考えてるんだろう?


「兵助?」


声をかけられて、はっと顔を上げる
他の四人がこちらを見てる
俺はごめん、と一言謝った


「とにかく、遥人のところはまだ入れないだろうから、入れるようになったら真っ先に会いに行こう?」
「あぁ、そうだな」


雷蔵の言葉に、三郎が頷いて
俺達も特にそれに関しては異論は無かったから、頷いて朝食に向かった
自分の中で感じたわけの分からない疑問は、保留にした




血塗れの一報







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