宵闇に包まれて 街に居る間に身を休めるための場所として選らんだのは街外れの長屋の一室 先輩が入ってきたことを確認してから、軽く結界を張る 「・・・この際何も突っ込まないが、説明ぐらいは頼む」 「はい。むしろ説明しなければ今回は何も出来ませんから」 私は居間に座ると、立ったままの先輩に座るように言った 居心地が悪いのかばつが悪そうに座る先輩 私は蓮、藍、と言外に人型になるようにと含ませて名前を呼んだ 「はいはーい!」 「茶だな、少し待て」 すっと何も無い場所から現れた二人に、先輩は方膝を立ててあわせに手を入れた どう見ても臨戦態勢だ 「二人は私の使役する妖怪で、狐の蓮と狼の藍、それといまは学園に残していますが、由という蓮の妹狐がいます」 「・・・そうか、じゃあ侵入者でも危害を加える者でもないんだな」 「はい」 私の言葉に、立てた方膝を戻し、あわせに入れていた手も戻した先輩 ・・・最初からこれはやはりまずかっただろうか だが、最初のとげとげしさはなくなったから問題ないと思ったのだが・・・ 私は藍が出したお茶にあわせて、家の話をした 家が陰陽師の家系であること、それに伴い今回の忍務は忍者としての自分ではなく、陰陽師としての自分に対して言われたものであること、そして先ほど見た死体達はおそらく人に憑いた妖怪が行ったことであろう事を話した 「って事はすぐには終わらないのか」 「おそらくは」 「・・・じゃあ、さっきの陰の気だとか陽の気ってのはなんだ」 「人には陰と陽があります。いうなれば光と闇のようなものですが、先輩はどちらか問いえば陽の気が強い、だからこそ陰の気が多い場所では気分が悪くなったりすることがあります」 今まで戦場に巻き込まれた村なんかの近くを通ると気分が悪くなったりしたことが合ったのではないですか、と聞けば、確かにあったが、とはぎれ悪く帰ってきた まあ、すべてそのせいだと思いたくはないのだろう だが見えなくても影響があることは確かなのだ 「明日以降は誰が憑かれているのかを見つけなければなりません、先輩は昼間に表の街を回って気分が悪くなったと思う人を見つけてください」 「夜だと都合が悪いのか」 「夜はそもそも陰が強まります、その状態で見つけろというのは難しいかと」 先輩は夜は忍者のゴールデンタイムなんだがな・・・と呟いていたが、一応納得してくれたようだ しかし出発する前は散々私のことを嫌っていたというのに、ひどく簡単な手の返しようだ ・・・まあ、未知の物に触れると、知っている者にすがりたくなるのは、人間の本能なのかもしれないが 夜の城下町 闇にまぎれるように忍装束を着て、私は町を見下ろした 所々に陰の気が濃い場所が視える 『・・・酷いね』 『あぁ・・・見境が無いな』 「とりあえず見に行こう、話はそれからだ」 蓮と藍にそういって、私は屋根を伝い走った 宵闇に包まれて → 戻 |