もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

気づかないフリはもう飽きた








い組一、学年一、優秀だと
そうなるために努力をしていたのを知ってるし、俺だって勝ちたいと努力してきた
いつも僅差で抜かせない壁だったけれど、だからこそライバルだと思っていた
でも、こんなことを望んだ訳じゃ、ないんだ





「御門」


一日の授業が終わり、遥人や勘ちゃんと裏山にでも行こうかと話していると、遥人が先生から呼ばれた
遥人は一瞬だけ浮かない顔をして、俺たちにごめん、と謝ると、先生について行った
俺と勘ちゃんはそれを見送って
それを見ていた勘ちゃんがぽつりと呟いた


「・・・遥人、大丈夫かな・・・」


それは俺たちに共通した想い
遥人はここの所、よく先生に呼ばれている
俺と勘ちゃんは、遥人が陰陽師のせいなのかとも思って聞いてみたけれど、それにもあいまいにお茶を濁してしまうだけで
心配しているのは俺たちだけじゃなく、三郎や雷蔵、ハチもだ
顔が、たまに泣きそうなのを堪えるような、そんな表情を浮かべることがある
蓮も藍も、由ですら何も語らず、それどころかぱったり俺たちの前に姿を現さなくなった


「どうすればいいんだろうね」
「どうって言ったって・・・俺たちにはどうしようもないだろ、遥人が隠したいって思うなら、俺は待つしかないかと思うんだけど」
「私は違うと思うがな」


遥人の消えていった廊下の先を見たまま、勘ちゃんが静かに俺に問いかける
俺はそれに悔しい思いを抱えながらも、何でもないように返したすると、言葉を否定する声が後ろから聞こえた
振り向けば、三郎、雷蔵、ハチのろ組3人の姿


「なにが違うって言うんだよ」
「私は兵助の答えが正解だとは思わない。むしろ、私は遥人にちゃんと聞くべきだと思う」
「でも三郎、遥人ならきっと壊れてしまう前におれたちに相談してくれると思うんだけど・・・」
「・・・二人はいつも一緒だから、気が付いていないだけだと思うんだけど・・・」
「気づいてるか?遥人、春に比べて凄い痩せてんだよ」


俺と三郎の間に、ぴりりと少し緊迫した空気が流れる
だが、ハチの言葉に俺も勘ちゃんも少しだけやっぱり、と思ったのだ
それが表情に出ていたのか、確証がもてなかっただけか、と三郎が呟いた


「どちらにしろ、遥人が戻ってこないと聞けないし、帰ってきたら僕らの部屋に来てくれるかな」


ハチの部屋も近いし、と雷蔵が言えば、三郎もそれがいいな、と同意して
遥人が戻り次第ろ組長屋で話が落ち着くこととなった




気づかないフリはもう飽きた







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