四年目の始まり 新しい学年に上がる4月 一番乗りで学園に来た私は、代わり映えのしない己の部屋で一人目を閉じて座っていた なかなかこない己の学年に、いやな考えが脳裏をよぎる そんなわけがないとその考えを頭を振って追い出し、じっとしているからそんなことばかり考えてしまうのだろうかと心の内でため息をついた 私は一つため息をついて、部屋を後にする 向かうのは門だ 門に着けば、既に帰ってきていた同学年の人々が、不安そうな表情を浮かべている 誰もがただ、友は無事なのか、それだけであろう 兵助も勘も、三郎も雷蔵もハチも優秀だ ・・・ハチだけは、理論に少しだけ不安が残るが それでも、彼の野生の勘といえばいいのか、言葉では表しづらいが、突出したものがある だからこそ、きっと心配しなくとも戻ってくるだろうと、そう思っていたのだが 「・・・遅い」 あまりにも、遅くは無いだろうか いつもならば既に着いている彼らが揃って来ないなどと、そのようなことが偶然であるだろうか ピリ、と唇に痛みが走る どうやら無意識のうちに噛んでいたらしい 手を当てれば、微かに指につく血 それを一瞥して、私はもう一度門に視線を戻した 見えた黒色の癖毛 「っ遥人!」 こちらに走ってきて、そのままの勢いで抱きつかれる 私もそれを受け止めた 「お帰り、兵助」 一番に帰ってきた君に、一番最初の"お帰り"だ 私は安堵し、笑みを浮かべた 兵助は私の肩に顔を押し付けながら、小さく信じてたけど、学園に来て誰もいなかったらと思うと怖かったんだとこぼした 私は落ち着かせるように背中を軽く叩きながら、平気だっただろう?となんでもないように返す 自分の不安は億尾にも出さずに 兵助は肩に顔を押し付けたままだったが、小さく頷いた それからしばらくすれば、勘も帰ってきて 兵助をつぶしそうになりながらも、やっぱり思いっきり抱きついてきて お帰りといってやれば、大きな目を潤ませて、ぼろぼろと泣いた 前に兵助、後ろに勘という、女だったら確実に嬉しいだろうその体制だったが、同じ男で友人である今の私にとっては、手のかかる弟のような気がして 仕方が無いなと言って、そのままにしておいた けれど、不安はまだ消えず い組は集まった、けれどろ組の三人はまだ帰ってきていない まだ新学期が始まるまで、猶予があるとはいえ、不安なことには代わりが無かった 兵助や勘も三人を心配していて、早く来れば安心するのに、とこぼした 翌日 帰ってきた二人とお茶を飲みながら、三人が帰ってくるのを待った 部屋だと分かりにくいから、とわざわざ廊下の日向で 太陽が高く上がった頃、ばたばたとらしくない音を立てて誰かが近づいてきた 音のするほうを見ていれば、角を曲がってきたのはハチだった 「遥人!兵助!勘右衛門!」 「おかえり、ハチ」 「おかえりっ」 「4番目だな、お帰り、ハチ」 その後、ハチに続いて三郎と雷蔵も学園に到着し、無事4年に上がれたことを喜んだ どうやら三郎は来る途中で雷蔵に会い、雷蔵は自分以外がいなかったらどうしようかと不安になり、学園に来るのが怖くなっていたところに、三郎と会い、学園に来たのだという 「また揃って新学期を迎えられてよかった」 雷蔵はほっとしたように笑いそういった 四年目の始まり → 戻 |