君の家 せっかくだからと蓮に狐火を出してもらい、お湯を沸かすと、戸棚に仕舞っていた茶菓子と共に兵助と勘にお茶を出す 思わぬ利用の仕方だったのか、ぽかんとしていたのは、まあ仕方ないことなのだろう 実際初めてコレを由の前にやったときに狐をそんな使い方するの、遥人だけよ、と由から言われている まあ、蓮は面白いから構わないと言っているので良しとしているのだが 「まだ夕食まで時間があるから、食べても問題ないと思う」 「あ、うん・・・」 「ありがとう・・・?」 戸惑いを含んだ返答に、蓮が笑った それを横目に、私は先ほど途中で終わった授業の話を切り出す 「それで、先ほど伊賀崎に会う前に話していた合同実技授業の話だけれど」 「ん、そうだ、遥人は武器、何にするつもり?ちなみにおれは万力鎖」 「俺は忍刀かな」 「私は・・・特に得物は選ぶつもりはないけれど・・・そうだな、強いて言うなら扇か」 私の言葉に、霞扇?と首を傾げて聞いてきた兵助に、私は首を振る そして懐に忍ばせていた扇を取り出した すっと二人の前に出して、持ってみるといいと言うと、勘が持とうとする 「重っ!?」 「鉄扇だ。開けないのだけれど、よく出来ているだろう?」 装飾や塗装は普通の扇と変わりないものに仕上げてある 普通の格好をしていても扇ならばもっていてもあまり怪しまれることはないし、便利なものだ もちろん、普段使いなわけではなく、一般人に混じるときにもてるものとしての重宝だが 「まあ、難点といえば少し軽めにしてあることか。本当に武器として使うのなら、塗装なんかはしないで鉄だけで作ったほうがいいから」 「よくこんなの作ってもらえたね・・・」 「昔馴染みに偶然会ってね、長い間あっていなかったのだが、こちらを覚えていてくれたから、ついでに頼んだんだ」 御門がまだ健在であったころ、道具を頼むのはいつもそこだったから 私の顔も知っていたし、私も覚えていたから出来た技だといえよう 私の知る中で、一番腕のいい鍛冶屋だ 「遥人って、意外と顔が広い?」 「ん・・・どうだろう、人よりは広い・・・かもしれないな、私は"御門"だから」 「御門だと何かあるのか?」 兵助に聞かれて、私は一瞬迷い、顔を下げた だって御門が力を持っていたのは私が生まれる前の話だ 陰陽道が栄えていたこと自体が、今よりも前 その頃の栄光で貴族であったに過ぎない・・・と私は認識している 平安の大陰陽師である晴明の流れを汲む土御門家に連なる一番近い分家、それが遥人家 ・・・既に私以外居ない家ならば・・・例え土御門に近くとも問題ないだろうか 私はそこまで考え、顔を上げると私の家は、と口を開く 「陰陽道を生業とする貴族、御門家なんだ。貴族が故に、そういう、顔をあわせることなんかにはやっぱり出ていたし・・・そういう意味では、御門は顔は知れていた。それに、私は次の当主だったから」 「え、遥人って時期当主ってやつだったの?」 「むしろ貴族だったんだな」 二人の質問はどちらも肯定する当主がどうとかは、いまさらだけれどなと付け足す 「まあ、今まで遥人の行動がやけに丁寧だなーってたまに思うときあったけど、そういうことなら頷けるかな」 「食事のときとか凄い食べるの綺麗だったよな」 「・・・そんなに私の行動は違和感があったか?」 兵助の言葉に頷いた勘を見ながら、そう聞いてみれば、ちょっとね、と帰ってきた けれど共に、遥人の食べ方綺麗だから俺は好きだ、と言われた そうか、と返した私の顔が笑みを浮かべていたことに、私は気がつかなかった 君の家 → 戻 |