もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

初対面な自己紹介






中に招き入れて、蓮にも隣に座るように言う
ついでに藍にも人型を取ってもらい、座らせておく
由は今綾部のところにいるだろうからここにはいない


「・・・こいつらのことだろう?」
「ああ、遥人は一人のはずだし、そんなやつら見たことない」


兵助の言うことはもっともだ
勘も兵助と同じなのか、私をまんまるな目でじっと見つめていた
まぁ、別に知られても問題ないことだし、ずっと隠しているつもりもなかったから、そろそろいいかと思っただけなのだが


「彼らは私の配下にある妖怪だ。薄黄色の髪が蓮、銀色の髪が藍と言う。他に、綾部に憑いていた由という狐もいるが、今は綾部のところだな」
「・・・妖怪?」


パチパチと目を瞬かせ、復唱した勘に、私は頷いた
蓮がにこーっと笑うと、三尾の狐だよ!と教えると、藍もそれに習い、山犬の妖怪だと教えた
私や綾部以外の人間と話すのは久しぶりだからか、蓮はとても嬉しそうだ


「妖怪なんて始めてみた・・・」
「俺も・・・」
「まあ、普通は見えないから見る機会もないだろうな。今は蓮も藍も人型を取ってるから人に見えるだけで、普段は見えないんだよ」


へーと二人はどこか生返事を返した
蓮はそんな二人に気を良くしたのか、一度その場から姿を消すと、二人の後ろにまわって再び姿を現した
といっても、その一連の動作を私は普通に見れるから、驚くことなどしないのだが
二人は私のように見えるわけではないから、気配もなく後ろから現れた蓮に驚きの表情を浮かべていた
まあ、忍者のたまごらしく、その表情は一般人に比べたらとても薄いものだったのだけれど


「私の部屋でもしものが動いていたら、蓮や藍、由が動かしているかもしれないだけだから、あまり気にしないでくれ」
「ん、分かった」
「また来てもいい?蓮さんや藍さんと話してみたいし」


いきなりそういわれると思わなかったのか、藍は少し驚きの感情を表した
蓮は人間からそういわれると思わなかったのか、目を輝かせている
私はそんな二人を見ながら、構わないよ、と言葉を返した
そこにひょいと顔を出したのは由
まあ、見える状態じゃないから、来たことに兵助も勘も気が付いていないけれど


「おかえり、由」
『ただいま、遥人。どうしたの、この子たち』
「由って、さっき言ってたもう一人?」
「帰ってきたのか?」


二人の質問には是と首を振って答え、由には蓮や藍の紹介をしていたのだと説明した
すると由は面白そうね!といって人型になると、私の隣に座って姿を見せた
いきなり現れた由の姿に、兵助と勘は素直に驚く


「いきなりごめんなさいね、私が由。綾に憑いていた狐で、蓮兄さんの妹よ、よろしくね」
「こっちは久々知兵助、その隣が尾浜勘右衛門、二人とも私の友達だから、あまり意地悪をしたらいけないよ」
「分かってるわ」


蓮の妹らしくというか、悪戯好きな由は、やっぱり人を驚かせることがそれなりに好きで、たまーに綾部の同室をからかって遊ぶらしい
まあ、本当にたまにらしいけれど・・・綾が滝ちゃん滝ちゃんと言って自分を構ってくれないときだけよ、と言うのは由の言い分だ
事実、その滝とやら以外に悪戯はしていないみたいだから、私もそこまで言わないけれど


「えーと、よろしく、由さん」
「よろしくねー、由さん」


私は平和に挨拶をしている二人を見ながら、引き合わせたのは間違いじゃなかったかな、と少し胸をなでおろしていた



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