もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

一年生の疑問







すたすたと1年生の教室に向かう
私は少なからず、わくわくとしていた


「どんな後輩ができるんだろうなっ」
「さぁ、それは私には分からないけれど、良い子だと良いな」

楽しみです!と表情から行動からすべてで表現しているハチ
私たち6人の中で、私とハチ以外は、今年の1年生の後輩は居ないらしかったので、一年生の教室へ向かうのは二人だけだ
三年生と一年生の教室はそこまで離れていなかったからか、それなりに早く一年生の教室に着いた


「よし、んじゃオレい組だから!」
「あぁ、また夕食時に」


そう言って分かれると、私はは組の保健委員を呼ぶべく、教室の戸を開いた




―――――




がらりと音を立てて教室の扉が開いた
クラスメイトたちがみんな音が鳴った扉へ視線を向ける


「一年は組の保健委員、三反田数馬はどこにいる?」


顔を出したのは萌葱色を着た綺麗な先輩だった
僕は慌てて立ち上がって、主張する
だって僕は何故だか人から忘れられやすいから


「ぼ、僕ですっ」
「そうか、私は三年い組の保健委員 御門遥人だ、よろしく頼む」


小さくだけれど笑ってそう言った御門先輩に、僕はよろしくお願いしますと返してお辞儀した
御門先輩は僕の頭を撫でると、行こうか、と言って手を差し出した
それがあまりにも自然で、いつも誰かの手を引いているのかなと思った

僕は差し出された手を握ると、その背について、自分の教室を後にした



医務室は少し離れたところにあるのか、思ってたよりも歩く時間が長く感じた


「医務室って、そんなに遠いんですか?」
「え?あぁ、いや、本当はもっと近いんだが・・・」


分かりづらいけど、苦笑を浮かべたらしい御門先輩はそう言った
本当はもっと近いって、遠回りなのかな・・・?
僕は御門先輩のしたいことが分からず、首を傾げた
御門先輩は僕の頭を撫でると、保健委員だからね、と一言答えた

その言葉に、僕は保健委員になったときの事を思い出した

委員会決めで、なぜかいつもみんなに忘れられていた僕は、どうせまた忘れられているだろうからと、自分の席でじっとしていた
そしたら学級委員長になった子が、僕を見て、お前はいつも忘れられるから、保健委員だな!と言われて、勝手に保健委員にされた

でも、何でも忘れられるから保健委員なのか分からず、僕はよく分からぬままに保健委員になった
僕はどうして僕が保健委員になったのか、苦笑して保健委員だから、と言った御門先輩なら分かるだろうと聞いてみることにした


「あの、御門先輩、どうして僕は保健委員なんですか・・・?」
「うん?・・・三反田は保健委員になったとき、なんて言われた?」
「えっと、みんなから忘れられる、です」


おずおずとそう言えば、御門先輩はきっとそれが原因だね、と答えた
忘れられることが原因だなんて、どうしたらそうなるんだろう
僕は訳が分からなかった




一年生の疑問







- 38 -