もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

三年目の始まり






新しい制服に身を包み、ぐっと伸びをする
今年は去年や一昨年のように、来る途中で何かあったわけではなく、予定通りに学園につくことが出来たので、まだ同学年の半数が居ない
そして、いつも最初に挨拶に行く隣の勘と兵助の部屋にも、今日は勘しか居なかった


「久しぶり、勘」
「あ、久しぶりー、遥人。今年は早かったんだね」
「あぁ、うん。去年は綾部を拾ったし、一昨年も伊作先輩と来たからね」


私がそういえば、納得したように頷く勘に、私はそんなに遅く来るという印象を持っていたのかと苦笑をこぼした
曰く、いつも学園内では時間ギリギリだなんてないのに、春だけは遅いからと実は気になっていたらしい


「それにしても、2年連続って・・・やっぱり保健委員は保健委員?」
「・・・それはけなしてるのか?」
「え、違うよー」


事実確認だけだよ、と言う勘に、私はため息をついた
これが素で言ってるから少したちが悪い気がする
私は気にしないが、他は大丈夫なのだろうか・・・?

とりあえず私は気を持ち直すと、不運は罠にかかるかかからないかだけではないよ、と答えておいた
私の場合、なんだかそんな気がするからと避けると罠だったなんて言うのも多いのだ
完璧にすべて分かっていて避けているわけでも何でもない


「遥人っ!」


後ろから名前を呼ばれ、すぐにぎゅうっと抱きつかれる
なんだか離してくれそうもない声の主である兵助に、動けないよ、と言えば、腕の力が緩くなった
どうやら維持でも離す気はないらしい
私は苦笑をこぼしてから、腕の中で身体を反転させる


「久しいね、兵助」


元気だった?と笑えば、兵助は笑顔で大きく頷いた
それは良かった、と返して、つい手を出そうとして、あ、と小さく声を上げて止めた
そんな私に、兵助はどうかしたのか?と首をかしげた


「・・・12になるのに、もう頭撫でられるのとかいやじゃない・・・のか?」
「いやじゃ・・・な、い・・・?」
「兵助、何で疑問系?」
「いや、なんでだろう・・・?」


私が聞けば、兵助の返答は疑問系でなんだか腑に落ちないものだった
というか、勘がきょとりとして聞けば、兵助は自分でも分からないらしく、首をかしげた
勘は?いやじゃない?と振れば、勘はにこりと笑って、全然!と言った
そんな勘に手を伸ばすと、ぽすぽすと今までと同じように撫でた


「遥人はなんだかあったかいからさ、兄さんって感じがする。なんかたまに女の子らしいって感じるときもあるけど・・・」


・・・図星過ぎて何もいえない
前世で生きた月日を持った上で、御門遥人となった私が、女性としての感性を持つのはなんら不思議なことではないと思う
・・・しかし、そんなに女のようなことしていたのだな、私は
苦笑をこぼしながらも、私は今後もう少し女らしさを出さぬよう気をつけないといけないなと感じることになった




三年目の始まり







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